5. 分散の影響がある場合の堆積物中の速度の推定方法
波の分散は群速度と位相の分散から補正する。
発振器と受波器間の距離が固定の場合、周波数と伝搬時間をリンクさせる。周波数f0に対して、すべての波の群速度は一定である。波数kは、k=k0-f/Vgで、位相速度に関しては、k=f/Vpである。もしk0がゼロでない時、波の伝搬は前節で見たように分散性となる。k0はφ0/(2π△x)に等しい。ここでφ0(ラジアン)は、2つの隣り合う軌跡間の位相変化であり、△xは距離のシフト量である。
速度分散の補正は、2つの隣り合う軌跡間のφ0の位相補正を導入することによって得られる。この補正の後、位相速度と群速度は同じになる。f-kドメインでは、群速度はそれぞれの波の直線の傾きから得られる。実際のフィールドデータに関しては、もう少しの信号処理が必要となる。
6. フィールドデータ
1] 実験概要
実験は1995年11月に、地中海のリヨン湾で行われた。その中で、音波探査の部分だけを述べる。音源は16リットルのエアガンで、2つのショット間の距離は140m、全体の探査距離は27kmである。図4に0kmかち14kmまでの断面を示す。12個の受波器が5m間隔で海底と海底から55mの間に配置された。ここで示した結果は海底に置かれた受波器のデータである。
堆積層の厚さは6kmあり、P波の連続的な速度勾配が見られる。波の影響を与えている堆積層は、海底から4kmの深さまで連続的に広がっている。ここでのP波の速度は1650m/sから3550m/sまで変化している。水深は大体70mで一定である。
この調査で、それぞれのショットの到来時間の遅れは水中でのP波の伝搬速度(1520m/s)を考慮して補正された。このプロファイルを図4の左に示す。
この速度補正の後、12Hz以下の周波数が、屈折波を強調するためと、モードの数を制限するために取り出された。これを図4の右に示す。これは分散性の場合で群速度は無限大ではない。
両方のプロファイルで、フィールドでの伝搬をまとめると、
・ 1520m/sより速い波は、それぞれの音波探査断面図で負の時間値をもつ。
・ 1520m/sより遅い波では、2-50Hzプロファイル(図4左)でいくつかの導波路が見られる。3-12Hz(図4右)では1つだけ見られる。
2] 屈折波の強調
バンド幅3-12Hzでは、波は主に1460m/sで伝搬している。この波は水中の伝搬(水中導波路)と多くの海面での反射によって51°の位相シフトをもっている。この波は堆積層の情報をあまり持っていない。
エネルギーに関しては、反射波や屈折波は役に立たない。図5に、この波の選択と分離、引き算を示す。処理の最後に他の波が強調されているのがわかる。