縮尺された浮体式防波堤のモデルを性能向上の目的で水バラストを追加できるよう改造した。規則波中の初期テストでは前の結果より若干良い結果となった。そこで、不規則波中において最後のタイプの防波堤について特別な研究を実施することにした。本論文ではモデル、実験用設定及び種々のテストの簡単な紹介をした後、関連する結果について述べる。
3. 浮体式防波堤の流体力学的運動
入射波の運動エネルギの一部は後方に反射され、一部は防波堤を通り伝播し、一部は防波堤の運動を保持するために使われる。さらに、波エネルギの分散影響を引き起こし、防波堤の運動はその上流及び下流の両方に伝わる波を作り出す。下流に発生した波は、防波堤を通過した波と相互に干渉し、分散波を構成する。一方、上流に発生した波は反射波に加わる。これらの現象の複雑性故に問題への理論的アプローチは厄介である、特に、最大化されるべきエネルギ分散の重要な役割の理由により厄介である。エネルギ分散については後述する。
エネルギ保存則は以下のように表わされる。
Cc・Hi2=Hr2+Ht2 (1)
これは次式をもたらす。
Cc=Kr2+Kt2 (2)
ここにHi、Hr、Htは各々入射波、反射波、分散波の波高、Ccはエネルギ保存係数、KrはKr=Hr/Hiで反射係数、KtはKt=Ht/Hiで伝達係数である。このプロセスで伝えられるエネルギは次式で表わされる。
Cd・Hi2=(1-Cc)Hi2 (3)
ここにCdはCcの関数で分散係数であり、次式で表わされる。
Cd=1-Cc (4)
防波堤の効率を最大にするためには伝達係数Ktを最小にすることが要求される。これは2つの方法で成し遂げられる。即ち、Cdを最大にする─Ccを最小にするか、Ccが一定の場合、Krを最大にすることである。
浮体式防波堤の2次元モデルは3次元構造の6自由度のうちの下記の3つを扱えばよい。即ち、
・ 水槽の長さ方向の軸に直交する水平軸周りの回転であるロール
・ 水槽の長さ方向の軸に沿った直線運動であるスウェイ
・ 上下方向の直線運動であるリフト
もし、当該防波堤が適切な分散設備を装備しているのなら、最大のエネルギ分散は上記3つの運動の適切な組み合わせで得ることができる。防波堤の最大の運動は入射波の周期がいずれかの運動の固有周期に等しいとき起こるのは良く知られている。これらの状態において最大のエネルギ分散が発生し、結果として、伝達係数の減少につながる。しかし、もし、波周期が3つの運動の固有周期とは異なる場合、2つの解決方法の可能性がある。一つは、入射波の周期に固有周期を近づけるために防波堤の浮力部分を調節すること、もうひとつは、最大のエネルギ分散をあきらめ、反射係数を最大にするようにすることである。