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不規則波中における水バラストを装備した浮体式防波堤(OMAE98-0333)

(文責:西村)

A. Atzeni, A. Balzano, N. Montaldo

(Universita di Caglianri、イタリー) E-man;atzeni@idraca.unica.it

 

1. 概要

係留索で海底に係留した浮力部と水バラスト部を装備する浮体式防波堤のモデルについての実験結果を報告する。係留索の長さを変え、浮体式防波堤のスウェイ運動について実験した。浮体式防波堤内の適当な箱の中に圧縮空気を入れ、2種類の形態で実験が繰り返された。どの形態も4つの異なる周波数スペクトルの下で実験が行われた。圧縮空気なしで実験したスウェイ状態のひとつでは、異なるピークの周波数に対して0.3〜0.4の伝達係数(transmmission coefficient)が得られた。水バラスト部に圧縮空気を注入したケースではこの伝達係数が0.2より小さくなった。しかし、これは入射波のピーク周期が小さい場合であって、大きくなると伝達係数は0.36になった。縮尺影響を把握するには、より大きいモデルを使用しての実験が必要である。

 

2. 序

一般的に、不連続な浮体式防波堤は波に対する防御施設であって、自由表面に最も近い水深のところに設置される。不連続な防波堤を使用する際の利点の一つは、それが、浮体であれ、固定であれ、海域の保護のためであって、保護された内部の流れの循環を制限しないことである。さらに、これらの不連続な防波堤の中で、浮体式は異なる水深のところでも費用の大幅な増加無しに設置できるのが利点である。

1960年代から浮体式防波堤の採用が増え、特に、小規模なマリーナに対し採用が増加した。最近の重要な例としては、日本で養魚場保護のために64m水深のところで450m長さのバリアーが提案されていることである。

現在のところ、浮体式防波堤には2つの制限があると言われている。

・ 入射波高と伝達波高の比で表わされる伝達係数が通常0.4より小さくできない。

・ 防波堤の専門家は4秒以下の周期の波に対する伝達係数の効果的な減少を問題にしている。

池野たちは空気チャンバー付きの固定式防波堤の理論モデルにより、無次元化したパラメータを用いて下記の条件の下では5秒までの周期の波に対して伝達係数が0.35まで減じられることを示した。

・ b/L≦0.3

・ d/L=0.2

・ h/d=0.5

ここに、bは防波堤の幅、hは防波堤の喫水、Lは波長、dは水深である。

また、筆者達が1996年に行った規則波中の浮体式防波堤のモデルに関するテストでは、最大周期が5秒迄の入射波に対しては0.35未満の伝達係数が達成できることを証明した。同じ装置を用いて、前もって定められたスペクトルを有する不規則波中のテストでは、最大ピーク周期が6.75秒のときに0.4未満の伝達係数が得られた。

 

 

 

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