ところが、流れの弱い、大阪湾の奥の方であるとか、播磨灘の真ん中とかになりますと、その栄養成分が十分に生かされないまま海底にたまってしまいます。そして、それが腐ってヘドロとなり、海の中の酸素を使い尽くして、貝とか魚とかそういう高等生物が棲めないような状況を作ります。そういう矛盾がこの大阪湾の奥の方ではあるわけです。
明石のあたりにはノリの養殖場があります。兵庫県がノリの生産量日本一であることを何人の方がご存じかわかりませんが、ノリというのは「浅草海苔」と言われるように、東京湾の奥の産物です。それが、たくさんとれる場所がここになっているわけです。40年前には、そんなにとれなかったのです。栄養が多くなったがためにとれるようになった。そういう変化がこの間、起こってきているわけです。これから水系の問題に触れていくかと思いますが、そういった栄養成分が私たち周辺の暮らしの中から出てきているわけです。
■図2.5.2 大阪湾の埋め立ての変遷 (次頁)
この図は大阪湾の奥がこのように埋め立てられてきた、という経過を示しています。これは同時に、水の動きを損なってきたということもあるわけです。水が動いていれば、酸素が供給されて、栄養成分が生きてくるわけです。ところが、それを損なってきたがために、それが有効に利用されずにたまって、ヘドロと化して海の環境を損なっている。
ですから、水の動きをよくしなくてはいけない。私たちが肩がこるのも、血のめぐりが悪くなるからです。ちょっと運動してやれば、水を動かしてやれば、私たちの体は活性を取り戻します。それと同じことは、やはり海でもあると思うのです。
■図2.5.3 赤潮の発生実件数 (次頁)
海の栄養が増えてきたことは、赤潮の発生件数としてあらわれます。それが、ひと山越えて落ち着いてきてはいますが、まだ出ている。
■図2.5.4 兵庫県ノリ養殖の推移図 (次頁)
しかし、ノリの生産量は伸びているわけです。ですから、循環を邪魔しないものであれば、循環になじむものであれば、その環境容量を大きくしてやれば、十分生かしていけるのです。ですから、その辺の循環を損なう埋め立てであるとか、コンクリで固めるであるとか、そういうことをちょっと考え直す必要があると思います。
もうひとつの問題は循環に馴染まないものです。水の流れ、あるいは栄養成分の流れというようなことを考えて、それになじまないもの。
窒素、リンというのは循環になじむ方です。環境ホルモン、他にもいろいろとある人工的な化学物質、そういったものは循環になじまない。環境にいったん出てしまうと、なかなか自然になじんでいかない、こういうものはできるだけ少なくしてやらないと、取り返しのつかないことになってくる。そういう点で見ていく必要があると思います。
大阪湾はすでに死の海ということではないのです。生きた海です。それを生かすか殺すかは、この水系の人たちの関わり方次第だ、と。やればできるのではないか、と後半で考えたいと思います。
【片寄】大阪湾は死の海ではない。非常に希望の持てるお話をまずいただきました。だから最終的には、我々はどういう努力をしようか、そして明日からどういうことをやっていこうかということが今日このシンポジウムの課題になってきて、そういう形でまとめたいと思っています。冒頭に鷲尾さんから、死の海ではないという非常に明るい展望というか、努力すればよみがえるのだということをお話しいただきました。