それにかなり心を打たれるところもあったのですが、昔からありますように、私の頃は「一日一善」と言って、「1日に1個ぐらいはいいことをしなさいよ」と、よくおじいさんやおばあさんから言われたものですが、最近ですと「環境一善」というのですか、「1日に環境にとって少なくとも1個ぐらいはいいことをしましょうよ」ということで、ゆっくりでもいい方向に向けていければ、と思っております。
【小野】私がかつて博多湾でベントスの調査をしたことがありますが、そのときに出てくるもの出てくるもの全部ビニールです。貝が非常に減っていまして、当時、バカ貝(東京ではアオヤギと言うのですが)が非常に博多湾は多かったのですが、ビニールと一緒に出てくるのです。非常にぞっとした覚えがあります。今から30年近く昔の話であります。そのころからすでに、相当博多の周辺は自然が消えつつあったというふうに思います。
現在、流通センターがあるところがありますが、あそこにはトノサマガエルがいっぱいいまして、私どもは学生実習のトノサマガエルというのは流通センターのところにある田んぼに取りにいくのが毎年の例でした。今、福岡市内でトノサマガエルというのをご覧になった方はございますか。ほとんどいません。というぐらいに、元気な福岡というのは、とっかえに不元気な自然ができているわけです。
私どもが生活をするとどうしてもエネルギーを食べます。私も大分年をとっておりますが、生きていれば1日に2000カロリーぐらいのエネルギーを使っているでしょう。生きているだけで2000カロリー、車にも乗りますし、クーラーの効いた部屋にもおりますから、大体500倍ぐらい、つまり100万カロリーぐらいのエネルギーを、私自身が食っています。一人一人がそれだけのエネルギーがないと生きていけないという現実があります。
先程、私は片山さんの話を聞きながら、我々が生活をするということは何らかのかたちで自然に対してインパクトを与えている。これは海に限らないインパクトを与えている。今、共生ということがよく言われるのですが、共生ということは、できるだけインパクトを減らしていくことだろう。その次に、できれば人間が自然に対して何らかの助けになるようなこともすることが、来ることかなと考えたりしています。人が生きることというのは、仏教的に言えば業ということかもしれませんが、動物が生きているということは、少なくとも何らかのかたちで環境にインパクトを与えます。しかし、ふしぎなことに、野生の生物というのはそのインパクトは自然と共生しながら消しています。その消しているという部分が人間にはだんだんなくなってきているということだけは、今日のパネラーの方々のお話でだんだん明らかになったのではないかと思っております。
海と陸という関係が、それほどクリアカットに今日のシンポジウムで出てきたとは思いませんし、むしろ海と陸とやはり違うのかなというところも感じられる方もいるかもしれませんが、「海の悲鳴が聞こえますか?」ということで、一度皆様方、海をご覧になったらいかがでしょう。そして、海をご覧になった上で、この海をきれいにするためには自分は何をしたらいいのだろうということを、飛び込まないようにじっと見て考えてくださることをパネラーとしてご提案申し上げて、今日のシンポジウムを終わりたいと思います。