
(3)造船事情
チリ政府は、1956年に「自国商船隊振興計画」を発表し、自国船主義が唱えられると共に、チリ船舶の国内建造の重要性が強調された。
この計画により、船舶建造に対しての政府からの補助金制度、税制優遇措置などが設けられたが、結果的には形骸化してしまい、同計画の効果はあまりなかったようである。
現状は、チリの造船会社にとってなんら政府の政策がないのと同じ状態であり、自国の主要産業としての保護がなんら施されていない状況にある。
チリの主要造船所は、軍需と民間までの比較的大型船を建造するASMAR、中型船・フェリーなどを建造するASENAVE、漁船を専門とするMarco、修繕専門のSOCIBERに淘汰されてしまった感がある。
政府が軍需以外の目的で自国造船業を保護する政策に逆戻りすることは考え難い状況にある。
1997年1月1日現在、チリの主要海運会社は合計21隻(465,600G/T)の新船建造を発注しているが、国内の造船所で建造されている船舶はわずか1隻であり、その他の20隻はポーランド14隻、日本4隻、クロアチア1隻、中国1隻となっている。
また、1995年12月末現在、37隻ある1,000トン以上のチリ国籍船のうち、35隻が外国で建造された船舶であり、国内建造はわずか2隻のみである。
外国建造の内訳は日本22隻、ドイツ5隻、スウェーデン2隻、オランダ2隻、その他4隻となっている。
一方、船舶修繕については、修繕専門のSOCIBER社で年間約35〜45件、ASMAR社も外国船の修繕が200件前後、ASENAVE社も含めて年間数百件の船舶修繕が行われているものと推定される。
チリで最大のASMAR社は、世界各国にエージェントをもち、英国、ドイツ、ノルウェー、日本、韓国などの船舶を修繕している。
これらの船舶は、チリヘの輸出品の運搬に利用され、チリの港に寄港した際に修繕を受けている。
一方、その他の国の船舶は、航行の途中で米国やモナコなどで船舶修繕を受けており、チリの地理的条件は船舶修繕業にとり有利ではなく、メルコスール域内の交易の活発化も業績拡大にはあまりつながらないと考えられる。
チリの造船業の従業員数は、1996年現在で約3,000〜3,500人ぐらいと推定される。内訳はASMAR1,700人、SOCIBER50〜60人、Marco700人、その他である。
チリにおける主要造船所とその概要は、次の通りである。
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