
(3)造船事情
アルゼンチンの造船業は、今世紀のはじめにブエノス・アイレス港に出入りする外国船の修繕から始まった。
貨物船、漁船への需要が増加したことにより内航船の建造も同様に増加していった。 1960年と1963年には、造船業が水運業並びに漁業の発展のために重要な産業であると定める法律が制定された。
この時期に、造船業を支援する金融基盤(船舶拡充基金:Fondo Nacional de la MarinaMercante)も設けられ、アルゼンチン開発銀行は漁船建造を支援するプログラムを打出し、アルゼンチン中央銀行は低金利輸出支援金融プログラムなどを設けた。
また、自国造船産業保護の観点から、輸入船と自国船の比率を定める法律も1970年に制定された。
このような政府の支援のもと、1970年代にアルゼンチンの造船業は最盛期を迎え、商船および漁船の建造が盛んになり、アルゼンチンの海運会社もこの時期次々と設立され、船舶建造への需要はピークを迎えた。
しかし、その後アルゼンチン経済全体の悪化により、大蔵省からの国営会社に対する資金援助がなくなり、また、船舶拡充基金が消滅してしまったこと、更には国が抱える諸問題の中での造船業の優先度が実質的になくなったことなどにより、造船業界の成長も1982〜1983年から徐々に減速した。
1991年に至り、造船保護政策は完全に撤廃されることになった。
その後も政府の、造船市場の自由化を促すような海運政策が続き、1991年には外国籍船の海運市場への参入の許可、1992年には沿岸貿易における外国用船の自由化が行われた。 また、中古船舶の輸入を斡旋する法律も制定され、国内おける新船建造の需要はますます減少に拍車がかかった。
アルゼンチンの造船業界は、官公庁や自国海運会社からの船舶建造の発注がほとんど途絶えてしまったため、既に10年以上も低迷しており、過去10年の年間平均建造量は約19,000G/T、同5年の年間平均は約9,000G/Tと大幅に低下している。
また、中古船舶輸入への規制措置も施行されておらず、新しい船舶建造の需要の伸びは将来も余り期待できない状況にある。
アルゼンチン国立銀行、ブエノス・アイレス県銀行、投資貿易銀行は、造船業の復活のために、造船会社への特別融資の実施に合意をしており、また政府もブエノス・アイレス県内域と内水路で操業する小型船舶と俊漂船の修繕プログラムを促進するなど対策を講じている。
なお、1997年末における手持工事量は6隻、37,000G/Tである。
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