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(3)造船事情
 歴史的に米国造船業を支えてきた海軍艦艇の新造工事は、依然として事業基盤の大部分を占めているが、大量の艦艇新造が必要とされなくなり、米国造船所が生き残るためには商船建造に活路を切り開かざるを得なくなっている。
 艦艇建造計画では、1980年代には年間建造数が19隻であったものが、1992〜97年では10隻、1997〜2003年では6隻と工事量は激減している。
 一方、中小手造船所は内水面、沿岸向けおよび外国市場の各種船舶(カジノボート、水上タクシー、タグ、トウボート、クルーボート、サプライボート、フェリー、漁船、バージ、消防艇、救助艇など)を建造しており、今世紀末までは明るい見通しがたっている。
 連邦政府は、米国造船所が生き残るためには国際商船市場で競争力を獲得することが必要であると認め、それを支援するための総合的プログラムを開始した。
 1993年10月政府は、「米国造船所強化策:国際市場における競争力獲得計画」と題する報告書を発表し、同報告書を基にして米国造船所の軍事技術の民生転換と、国際市場における競争力獲得の支援策を打ち出した。
 同報告書の計画には、次の5項目が盛り込まれている。
 (1)公正な国際競争の確保
 (2)不必要な政府規制の廃止
 (3)国際マーケティング支援
 (4)タイトルXI融資保証による船舶建造融資
 (5)MARITECHによる民間市場競争力の向上タイトルXIプログラム(融資保証制度):
 1963年商船法(修正)により制定され、米国商船および米国造船所の発展・近代化を目的とするもので、米国政府が全面的信用保証を行うものである。
 米国造船所で米国籍船舶の建・改造を行う際の融資・再融資の目的で、民間部門が供与する債務に対し、連邦政府が信用保証を行うものである。
 本制度は、従来から存在していた制度であるが、冷戦終焉に伴う軍需の減少に対応して、造船業に対する支援として、93年に拡大強化を行ったものである。
 主な内容は、保証対象上限を建造事業費の70〜87.5%に引上げ、また、外国船主にも米国建造を条件として適用できることとした。
 本制度による援助を受ける資格を有する船舶には、一般に旅客船、バルカー、貨物船、タンカー、タグ、トウボート、バージ、浚渫船、海洋調査船、海洋石油産業向け船舶等の商船が含まれる。
 このほかに、政府の経済支援制度として、CCF(資本建造基金)プログラムがある。
 CCF:
 米国運航者は、CCF基金の積立てができる。
 運航者は特定の条件を満たせば、米国造船所から新船もしくは、改造船を購入する目的で課税猶予のCCF資金を引出すことができる。
 これらの制度を契機として、米国造船業界は国内外における商船市場への参画を図っている。

 

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