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(B)海運事情と保有船主の実態
 モロッコは、地中海と大西洋を結ぶ海運上の要衝に位置し、国際港として知られたカサブランカをはじめ、モハマディア、ジェフラスファ、サフィ、その他多数の良港を有し、海運は古くから発達していた。
 モロッコは68年以来、長期にわたり経済開発計画を実施し、この中で海上荷動き量の増加に対応するための海運力の増強を図ってきた。
 現在、新5カ年経済開発計画(1996〜2000年)が実施されており、GDP6%成長を目標としているが、政府は、この中で国内及び国外からの投資を奨励しており、海運部門もその一環として海運投資法が制定されている。
 この投資法により、海運会社は設備・材料などの輸入にかかる関税の免除、最初の5年間の法人所得税の全額免除および次の5年間の50%減額など優遇措置が講じられており、海運力の増強が期待されている。
 1973年には4社に過ぎなかった海運事業者は、90年には18社に増え、その殆どが民営企業である。
 モロッコとヨーロッパ諸国との間の海運事業者は21社あり、その過半数がモロッコとヨーロッパの合弁会社である。
 89年にモロッコ・ノルウェー海運会社が中古客船(RO/RO船)の購入用に北欧の国際金融公社(IFC)から630万ドルの融資を受けた。
 これは、スペインのアルジェラス港とモロッコのタンジール港間の輸送量の増加に対応するものであった。
 また、92年からScanfreight Continental社とVan Uden Atlas Container社がモロッコのカサブランカと北ヨーロッパを結ぶ合弁運送事業をはじめている。
 フランスのBollore Technologie社とモロッコ最大のコングロマリットである北アフリカ会社(0mnium Nord-Africa, ONA)が、モロッコ・フランス間の航路を強化するため、89年に陸運会社SCAC-Mediterranceと海運会社SCAC-Marocの2つのジョイントベンチャーを設立している。
 柑橘類、野菜の輸入国であるフランスとの貿易の効率化のため、従来カサブランカ港を通して行っていた農産物輸出を、フランスのボルドーとモロッコのジョフラスファ間に航路を新設することにより物流の効率化が図られている。
 96年には、冷蔵トラックを積載するフェリー用として、モロッコのアガディール港とフランスのロリオン港、ナント港を結ぶ新航路が開発されるなど、フランスとの貿易の活発化に対応した海運の動きがみられる。
 モロッコとフランスの海運貿易では、フランスのマルセイユ港が貿易量の3分の1を分担しており、重要な役割を果たしている。

 

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