3%の建造助成
提案されている3%の建造助成は、現在の5%の助成制度が終了する1991年の7月1日から2000年の12月31日まで、18ヵ月間の適用を見込んでいる。その目的は、海外の主要な競合相手(欧州連合)の建造助成が廃止されるまでの短期間、国内造船業を支援することにある。この施策は、公平な競争の場が確立されたときに、海外の造船所と対等の立場で競争するのに造船業が必要とする生産資源を保持することにより、国内造船業が「二重調整」の問題を回避するのに役立つ。
3%の助成金の打切りの期日は、欧州が建造助成の廃止の決定をその日に実行に移すことを条件にすべきであるというのが、パネルの考え方であった。欧州の補助金が存続すれば、オーストラリアの助成金も2004年6月30日まで、ないしはOECD造船協定の発効まで(どちらか早い方の日まで)継続されるであろう。
パネルは助成金の受給資格基準を検討し、新規3%措置の適用にあたっては従来と変更なしとするよう勧告した。従来の制度は、試行、実験を経て広汎な理解を得ているので、18ヵ月に過ぎない助成金の延長のために制度を改訂する必要はないと思われる。しかし、パネルとして受給資格基準の変更は勧告しなかったが、新規参入者が助成金受給の登録申請をする道は開けておくべきである。
パネルはこの取決めの意味が、暫定期間中、より手厚い助成を受けている欧州造船業と国内造船業が依然として競合する点にあることを指摘した。欧州連合の建造助成率は引き続き9%(オーストラリアの助成基準に換算すれば約12%に相当する)で、契約が2000年12月31日以前に締結されている場合、その後3年以内に引渡しが完了すれば、助成の対象となる。さらに、技術革新補助金や地域政策による援助は、これらの分野におけるオーストラリア政府の支援より手厚い。
パネルは、提案されている3%の助成金について、段階的廃止のための経過措置は必要ないと考えた。海外の競合相手が助成の即時廃止の通告を受けるのと同様に、オーストラリアの業界も即時廃止の通告を受けるのであれば、不公平は生じないからである。
しかし、補助金廃止の日に未完成である船舶に対応するための特別措置(現在の50%ルールと同種の措置)は必要となる。補助金廃止の時点で船舶が50%完成しているかどうかを査定することは非常に困難なので、欧州連合の2000年以降の造船政策に範を取った、従来よりも簡便な制度をパネルは提案している。
パネルが提案した助成金受給資格は、下記の通りである
- 2000年の12月31日までに造船の最終的契約が締結され、オーストラリアの税関に提出されていることを要する。
- 船舶の引渡しは2003年の12月31日までに完了しなければならない。
竣工まで3年も余裕を見るのは長すぎるという主張が一部にあるかもしれないが、たとえ補助金の価値が4分の1程度でしかないとしても、補助金廃止の経過期間について、欧州とある程度均衡のとれた措置を国内産業に提供することが重要であるとパネルは考えたのである。たとえば、10隻の高速フェリーの受注でオーストラリアの造船所が欧州の造船所と競合しているとすると、納期が欧州の造船所の3年に対して、6ヵ月とか1年だった場合、非常に不利な立場に置かれる。実際には、このような状況が生じる可能性は少なく、3年間の規定から生じる国庫負担が、段階的廃止期間を大幅に短縮した場合の負担よりも著しく大きくなる可能性は少ないと、パネルは見ている。