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3.4 船体および環境への影響

 既存実験では、本実験と同様の電位印加時において塩素濃度の増加やpHに変化が見られなかった1)2)3)4)とされている。 それは、自然海水中にはもともとある程度のオキシダントが含まれており、微量の印加では変化しないためと考えられる。 また、本実験の結果では、大阪南港のような有機物の多い海水ではオキシダント濃度が電位の印加によって上昇しても速やかに分解されるため心配なく、オキシダントの生成は、鹿島港のような有機物の少ない(きれいな)海水に対して、長時間印加した場合の危惧にとどまる程度と考えられた。 さらに、前年度の調査研究5)では、微量なオキシダントはすぐに分解されることが確認されている。
 オキシダントの船体(鉄)腐食性に関するデータは、ほとんど見あたらず不明である。 しかし、以上の分解性と、本電気処理法が長時間の印加を必要とするのは、底泥というオキシダントの分解を進める有機物の固まりの中に分布するシストを対象に考えた場合(印加時間90秒)だけであることを考慮すると、船体腐食と二次汚染の両者ともにほとんど心配ないものと推測される。

 

 


1) S.Nakasono,et.al(1992):Electrochemical disinfection of marine bacteria attached on a plastic electrode. Bioelectrochemistry and Bioenergetics,27
2) Electrochemical Prevention of Marine Biofouling with a CarbonChloroprene Sheet. Applied and Environmental Microbiology,59,11
3) 松永是(1996):微生物の電気化学殺菌とその応用
4) 田口朋之,他(1996):付着珪藻の電気化学的殺菌とその評価、電気化学学会講演要旨
5) (社)日本海難防止協会(1998):平成9年度 船舶のバラスト水管理方策に係わる調査研究報告書

 

 

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