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(3) 実験結果

 実験結果の検討は、電解槽を通過したシストを対象に行う。 なお、電解槽に付着したシストを含めた自家蛍光法による Alexandrium 属シストの分析結果およびその変化は、巻末の資料;1.9と資料;1.10に、同プリムリン染色法による結果および変化は、資料;1.11と資料;1.12に収録した。

 

? 自家蛍光法

 図?.2−11には、自家蛍光法によるシストの変化(電解槽通過シスト)を示した。
 正常なシストとは、充分な休眠期間を満たした後に発芽し、遊泳細胞となり次世代の増殖に参加する細胞と定義される。 また、完全な休眠状態にあるシストは、光合成を行う色素であるクロロフィルを持たず、それが休眠期間を終えて発芽・遊泳する直前になると、エネルギー獲得のためにクロロフィルを発現するようになる。 したがって、外見上は正常なシストに見えても発芽しない(クロロフィルが発現しない)シストは、次世代の増殖に貢献しない非正常シストと考えることができる。 
 実験の結果は、次のようにまとめられる。
 電気処理を行わない対照のシストのクロロフィル発現率は、20%弱であった。 電解槽滞留時間10秒の場合は、ほぼ同率であり、電気処理による効果は認められなかった。
 対して、滞留時間が90秒の場合は、クロロフィルを発現するシストは全く発見されなかった。

 

? プリムリン染色法

 図?.2−12には、プリムリン染色法によるシストの変化を示した。
 黄緑色蛍光を発する正常なシストは、電気処理によって減少した。 減少率は、電解槽内滞留時間10秒および90秒共に、約60%(90%から30%に減少)である。一方、黄緑色蛍光が淡いシストおよび殻(死シスト)と判断されるシストは、電気処理した場合で増加しており、特に、殻シストは、電解槽滞留時間が長いほど多く、滞留時間が90秒の場合には50%を超えている。 殻シストは、明らかに発芽能力の無い死シストと判断されるが、それらシストが電気負荷の上昇と共に増加することは、電気処理法がシストに対しても損傷効果があることを表している。
 正常な黄緑色蛍光を発するシストおよび黄緑色蛍光が淡いシストが、発芽能力を備えているか否かは、不明である。 それは、顕微鏡観察上、正常と判断されるシストでも発芽しない細胞があるし、その反対もあるからである。 ただし、プリムリン染色法による電気処理による損傷は、おそらく蛍光の強弱(正常:強,〜死:無し)に反映されるはずであり、電位印加の強さによって正常な黄緑色蛍光を発するシストが減少し、黄緑色蛍光が淡いシストが増加する今回の結果は、ほとんど蛍光を発しないシストの増加と共に、電気処理法がシストに対しても損傷効果があることを指示している。

 


図?.2−11  自家蛍光法による Alexandrium 属シストの変化

 

 


図?.2−12  プリムリン染色法による Alexandrium 属シストの変化

 

 

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