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このひと/吉田 民平
この2月から長年親しんだSOSに代わってGMDSSの時代に移行した。GMDSSになってどこがどう変わるのか。この制度の担当官庁の1つである海上保安庁の担当課長に尋ねた。

―海上保安庁のGMDSSへの対応について。

吉田 GMDSSは平成4年から導人が始まり、7年間の移行期間を経て、1999年2月1日から完全実施となりました。
 海上保安庁ではナブテックス送信局やコスパス・サーサット地上設備等の関連施設の整備を行い、平成6年度までに陸上施設の整備を終え、順次、従来からのシステムに加えて、GMDSSに対応した運用を行ってきたところです。
 このように本年1月末日までは新旧のシステム双方に対応してきましたが、2月1日からはGMDSSに完全に移行しました。このため長い間使用してきたモールス無線電信は、同日以降は取り扱っていません。

―海上保安庁の通信所ではGMDSSに対応してどのような通信を行っていますか。

吉田 GMDSSでは捜索救助のため、デジタル選択呼出(DSC)装置を使用する「中波・短波・超短波通信システム」、周回衛星を利用する「コスパス・サーサットシステム」およびインマルサット衛星を利用する「インマルサットシステム」があります。
 また、海上安全情報提供のための通信システムとして「ナブテック放送」および「インマルサットEGC放送」があります。
 海上保安庁の本庁通信所では「短波DSC」による遭難警報等の受信およびこれへの対応を行っているほか「コスパス・サーサットシステム」の業務管理センターを設置し、周回衛星を経て送られてくる遭難警報を管区海上保安本部や外国の救助機関等に配信しています。
 また、那覇等全国5つの海岸局から送信しているナブテックス放送について、水路部、気象庁等から送られてくる情報の編集、放送時間の調整等を行っています。
 一方、全国16ヵ所の陸上通信所では「中波DSC」による、また、行動中の巡視船艇では「超短波・短波・中波DSC」による遭難警報等の受信およびこれへの対応を行っています。
 なお、インマルサット衛星経由の遭難警報等はKDDから海上保安庁に通報されます。また、「インマルサットEGC放送」は、海上保安庁水路部が行っています。

―GMDSSにより海上保安庁通信所の果たす役割に何か変化はありますか。

吉田 海上保安庁の通信所では従来から24時間無休で遭難周波数等を聴守し、遭難情報に即応する体制をとっています。GMDSSになっても、その体制には何ら変わるところはありませんが、GMDSSでは、衛星や短波周波数を使用することから従来よりも広範囲な海域から遭難情報を入手することとなり、外国救助機関にも情報を提供する等、その責任は一層重大なものとなっています。

―今後の課題がありましたら。

吉田 GMDSSへの完全移行からまだ日が浅いこともあり、誤って遭難警報を出すケースがありますので誤発射の防止に皆様のご協力をお願い申し上げます。また、万一誤発射をした場合には、海上保安庁の通信所にご連絡願います。

〈プロフィル〉昭和22年生まれ
昭和45年海上保安大学校卒業
岸和田海上保安署長
関西空港海上警備救難部長
第九管区海上保安本部総務部長などを経て
平成10年4月1日から現職
海上保安庁
警備救難部
情報通信管理課長
吉田 民平

 

 

 

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