台風による高潮の予測結果
前に述べたように、平成10年は9月に入ってから5号、8号、7号と台風が相次いで円本に上陸しましたが、この中でも、台風7号の時には西日本を中心に1メートル前後の高潮が発生しました。図2に、台風第7号通過時に大きな値が観測された大阪検潮所での高潮の時間変化を示します。ここで「高潮」とは、台風などが来襲しないときに予測される天文潮位(潮位表に記載されている値で推算潮位ともよばれる)と実測された潮位を比較したとき、実際の潮位が、天文潮位より増加した分のことを指します。この図で、実線で示されているのが9日22日9時から23日9時の期間について行った高潮数値予測モデルによる予測結果です。先に述べたとおり、高潮モデルでは、5つの台風のコースについて予測を行いますが、ここでは実際のコースに最も近かった予報円中心を通過した場合の予測値を表しています。また、破線で示されているのが、大阪検潮所で実際に観測された高潮です。
予測された高潮と実際の高潮を比較しますと、値は予測のほうが若干大きい傾向はありますが、15時ごろに高潮が最大となる様子が正確に予測されています。これまでの経験式による予測手法では高潮が最大となる時刻は予測できませんでしたが、モデルの導入によって精度よく発生する時刻を予測することが可能となりました。この他にも、台風が通過し高潮が1度おさまった後に湾内の振動等によって数時間後に小さなピークが現れるといった詳細な現象についてもある程度再現されています。
9月16日午前中に関東地方を台風第5号が通過した際、東京で16日9時に0.8メートルの高潮が観測されました。このときには16日3時からの高潮モデルの計算結果で、最大1.1メートルの高潮が8時に発生する予測が得られています。
図2 台風第7号通過時の大阪検潮所での高潮

1998年台風第7号通過時の大阪検潮所での高潮。予測値を黒丸、実測値を白丸で示してある。
予測値は、1998年9月22日9時の時点で24時間予報を行ったもの。
それ以前の値は、過去のデータを基に再現計算をしている
おわりに
このように高潮数値予測モデルの導入によって、事前に各地方の高潮の発生状況が時間ごとに詳細に予測できるようになりました。この結果を的確に用いることによって、より、正確な高潮警報・注意報の発表が可能になると考えています。一方で改善すべき点も残されており、気象庁では今後もさらに高潮予測の精度向上に努めていきます。
また、他の情報と同様に台風や高潮に関する情報も時々刻々と更新されています。いつも最新の情報をご利用いただくようよろしくお願いします。