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(2)RADAR/ARPAシミュレーター

全天候操縦と呼ばれ、シミュレーターはなんと8隻の自船と32隻の他船機能を有している。ずらりと並んだ自船の個室が8室ある。その中に2基のRADAR1基のARPA、自船コンソール台、海図テーブル、通信装置があり、船橋のリアル感を出すために暗くして霧笛を鳴らす等種々の工夫があった。
 ARPAは最新のSPERRY、RAYTHEON、FURUNOの3種類があった。そして教官の制御室と広い報告室があった。前述の(3)、(4)のコースがあるが、筆者は受講生に密着して両方の試験(ペーパーテストとシミュレーションによる試験)を見学できた。
 午前中のペ-パーテストの内容は(1)他船を交すための新しい進路とそのときのCPA、?他船の新ベクトル、(3)狭い水路で他船を追い越す、行き会う際の各種の状況、(4)ARPAでの各種状況を示してそのときに必要な行動や情報についてであった。
 午後はシミュレーションが行われ、2隻(1隻は受講生が操船するTAKUSANMARUという巨大船で、他の1隻は筆者と手空きの教宣が操船するITIBANMARUというコンテナ船)の自船と、5隻の目標船で狭くて浅瀬のある水域を視界0.2カイリで航行して、2隻の自船は他船を避航しながらそれぞれの目的地に向かうという設定であった。
 受講生の1人であるヒューストンのパイロットはうまくARPAを使いこなし試験にパスし、筆者も合格点を貰った。
 通常は事前説明10分、訓練40〜60分、体験報告15分で行われている。RADARと比べてARPAの便利さを再確認したが、電子海図はさらに便利で、近い将来の全天候操縦訓練は、電子海図訓練になることを実感した。
 操舵号令に右、左という言葉が使用され、STARBOARD、PORTという言葉は操舵号令以外の例えば、STARBOARD SIDO BUOYという場合に使用されていた。
 確認をしたら通常は次のように使い分けている。
 「実船による訓練か、シミュレーターによる訓練か」という論議がなされることが多いが、両方必要であり、特にシミュレーターでは実船での教育、訓練ができない意思決定を伴う訓練ができることを実感した。

−つづく-

消えた灯台守

 スコットランド北西方、フラナン諸島アイリーン・モー島の灯台は1899年に設置され、灯台守4人のうち1人が2週間ごとの休暇を取りながら島には常時2人が勤務していた。
 1900年12月5日夜、近くを通った船はこの灯台が点灯していないことに気づいた。
 嵐に阻まれた補給船が6日遅れで島の東側へ着いたのは26日朝だった。普通なら出迎えるはずの、3人が姿を見せないので、交代員は灯台へ走ったが、どこにも人影はなく、西側桟橋が波で目茶苦茶に壊れているほかに異常を認めず、日誌は13日まで、黒板には15日午前9時の気圧と温度が記されていた。
 古くからスコットランドに伝わる海から聞こえる呼び声に誘われたに違いないと他の灯台守や漁師たちは身ぶるいしたという。

船を彼女と呼ぶ理由

 「いつでもその周辺には男たちが付きまとい、てんやわんやの大騒ぎが演じられている。ウェスト(中部甲板)が美しく、コルセット(マストのシュラウズ)を付け、紅や白粉(ペイント)の化粧を欠かさず、時にはきらびやかに満身を満船飾で飾り立てることもある。
 下半身を水面下に隠し、上半身をあらわに出したその船は、入港すると真っ直ぐに、ボーイ(係留浮標)のところへ行こうとするが、正しくリードするには当を得た男(パイロット)が必要であるとはアメリカの書物による船を女性に見立てた理由である。
 またイギリスの詩人は「船はいつも形の良い曲線美を見せてくれ、満天にきらめく星空の下で物想いにふけり、良き伴侶(メイト)を得て荒海を乗り切る」から彼女と呼ぶのだといっている。

(杉浦昭典著から抜粋「海の昔ばなし」)

 

 

 

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