この人と/橋本 雅之
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自船の位置の確認と進路の把握の指標となる航路標識、昔からの灯台のほか、今では、光波標識、ロランC、レーダービーコン、DGPSさらには海上交通センターなどが次々と整備されているが。 |
― 航路標識の役割と現状についてお話しください。
橋本 航路標識は、船舶航行に必要な自船の位置確認と安全な進路把握の指標となるもので、安全確認に不可欠な施設です。暗夜の船の命綱である灯台が、一般的な航路標識ですが、今ではこれらに加え、正確なナビゲーションも可能な人工衛星などを使った最先端技術を積極的に導入しながら、新しい時代に即した航路標識の整備を行っております。
例えば、電波標識分野においては、国際協力によるロランCチェーンの運用の他、全世界衛星測位システムであるGPSの民間利用時の測位誤差を精度10メートル以上にまで補正向上させるディファレンシャルGPSの整備を進めており、今年度中に日本沿岸全域での整備を完了する予定です。また岩礁など航路人口や孤立した障害物などを船舶レーダー画面で確認しやすくするためのレーダービーコン局などの整備も行っています。
― 船舶航行が複雑な輻輳海域では航路標識はどのような役割、機能を果たしていますか。
橋本 輻輳海域では船舶の大型化高速化等に対応し、海上交通センターが安全確保のための情報提供と航行管制を行っていますが、これも航路標識の1つで、すでに東京湾など全国6カ所で運用されており、新たに伊勢湾海上交通機構(海上交通センター)の整備にむけ調査を行っています。
― 光波標識についてはどのような整備を行っていますか。
橋本 光波標識では、特に輻輳海域で、ブイの大型化、夜間のわかりやすい番号表示や光力増大により視認性を向上するなど機能向上を図っています。
例えば、昨年7月、東京湾でダイヤモンドグレース号の油流出事故が発生しましたが、本年8月に中ノ瀬西側灯浮標の大型化、光力増大や標識番号の電光標示化等を実施し、中ノ瀬西側海域における安全対策の充実強化に努めております。
また、最新の技術を活用し、太陽電池・波力発電等自然エネルギーを利用した地球にやさしい光波標識を整備しています。一方、各地でウォーターフロント振興のため、地域の特色を取り入れたデザインによる灯台整備の要望が多く、これに対応した灯台を整備しています。また、明治期に建設された歴史的価値を有する重要な灯台の保全にも努めています。
― 今後の抱負をお聞かせ下さい。
橋本 最近、外国船・外国船員の増加やプレジャーボートによる海洋レジャーなど市民の海洋へのめざましい進出に伴い、水路事情の知識や輻輳海域における経験が乏しい船舶や、これらによる海難が増加し、きめ細かな航行援助が必要になっています。そこで、海上保安庁は、多様化する海上交通環境や新しい時代のニーズに対応して各種の航路標識や海上交通情報機構を整備充実し、また主要な岬の灯台等の局地的気象海象状況を提供する船舶気象通報なども併せて幅広く情報提供を行って、安全で明るく美しい海の確保のため積極的に努力してまいります。皆様のご支援をお願い申し上げます。(9月29日、原稿により部長見解をいただく)
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〈プロフィル〉
昭和22年生まれ。
昭和46年東京大学法学部卒業、同年連輸省入省、運輸政策局国際企画課長、海上保安庁水路部監理課長、東北運輸局長などを経て平成10年7月から現職。 |
海上保安庁
灯台部長
橋本 雅之 |