今なお本物の海賊
帯封には、「彼は海賊に会った。驚異と衝撃のドキュメント!フィリピンの南に輝く美しい海、スールー海。そこには、今も『本物』の海賊たちが暮らしている!無法地帯を平然と生き、現代政治のはざまを擦り抜ける、驚くべき異端者たちの素顔に、貴重なインタビューで肉薄する興奮のドキュメント」とする、門田修氏の「海賊のこころ・スールー海賊訪問記(1990年)」という本があります。
それによれば、「スールー諸島がボルネオとぶつかるところが海賊たちの海になっている。そこにはフィリピンとマレーシアの国境が走っているのだが、それは海賊たちにとっては都合のいいことである。国境を利用して海賊たちは犯罪をはたらく。マレーシア側で海賊をし、追っ手を振りきりフィリピン側へ逃げるとか、警備の手薄な国境線上で襲うなど、マニラやクアラルンプールからみれば辺境の海で海賊は今も活動している。……海賊は残酷で非情だ。まるで熱帯の明るい海に深紅の鮮血が似合うとでもいいたげに、簡単に人殺しをする。マシンガンをぶっぱなし、死体を海に捨てる。それはたちまち鮫やダツなどの肉食魚に食べられてしまい、無残な姿を人前にさらすことはない。誰もが誰が海賊であるかを知っている。
だが海賊が海賊として捕まることはない。広い海の上でのできごとだ。逃げ込むのに適当な小島もたくさんある。軍や警察は海賊事件にはたいして関心を払わず、海賊を追いかけようともしない。ますます海賊は増長する。
現代のスールー海賊たちは語ってくれた。『海賊を悪いこととは思わない』。『弱いやつは襲われてもしょうがない』。これが唯一とは言わないが、もっとも基調をなす海賊哲学のように思える。……海賊によれば『人は殺しても構わない』ものだった。刺激的な哲学ではないか、」と。
むすび
スールー海の海賊たちは、冒頭に紹介をした「海賊に関するIMBの報告」に含まれる事件の、襲撃側当事者になることがあるのか否かは定かではありませんが、このレポートは、極めて現実味を帯びたものとして迫ってくるように思われます。
海賊の対策は急を要すると思われますが、海賊の本当の怖さをもっと国民に知ってもらうことからはじめる必要があるかも知れません。
目 で 確 認 海 図 で 確 認 船 の 位 置
入江一花さん作
特集 東南アジア海域における海賊発生状況
海 賊 発 生 場 所
〔○数字は次頁「海賊発生状況」表の番号〕
前ページ 目次へ 次ページ