この人と/池内亨
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船腹過剰など構造不況に苦しむ内航海運界では、コスト削減と乗組員不足の解消を狙いに近代化船の開発に取り組んでいる。思惑どおりに進めるには荷主や行政の理解と協力が不可欠だという。 |

全国内航タンカー海運組合
専務理事 池内亨
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プロフィル
昭和7年10月生まれ、大阪府出身
昭和32年3月神戸市立外国語大学卒業
上野運輸商会(現上野トランステック)取締役
伊勢湾防災?専務取締役
上野ケミカル?専務取締役などを経て、
平成8年4月から現職
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―内航船の近代化の狙いと現状を聞かせてください。
池内 近代化の研究は平成4年7月からはじまりました。基本的な考えは、船員補充の困難な現況から少人数の乗組員で運航できることが第1の狙いでした。
もちろん、安全確保を念頭に、近年の著しく進歩した諸機器類および技術導入によりその実現は可能だと判断しています。また、人間性や環境面にも配慮し、女性を含む若い世代が進んで参集してくれるような魅力ある船であり、職場であることが求められます。
このような近代化船の実現には自助努力はもとより、荷主・行政他関係者の理解を得て海・陸一体となって推進することが必要です。
―近代化船の安全対策についてお聞かせください。
池内 ワンマンブリッジコントロールを前提にして可能な限り安全性の向上を図りますが、具体的には次のようなことがあります。
航海設備としては、操船者に高い負担がかかる狭水道および輻榛海域の航行時、狭視界時(霧・夜間)および着離桟操船時に、これらの操船は大量の情報収集、判断、複雑な制御が重複する場合があります。この作業を一人で操船可能とするにはバランスのとれた自動化を図り、有機的マン・マシンインターフェースが必要です。
例えば、高度航海支援システム(INS)=航海情報の統合により表示・監視・制御を一元管理する。高度着離桟支援システム(IBSS)=統合船橋システム(IBS)等を設備したワンマンブリッジオペレーションを基本としたコックピットコンソール型操舵室などです。
航海の安全性確保としては、衝突予防支援装置(ARPA)、航路計画、航海情報、電子海図等を同一画像に重複表示可能なINS装置の装備があります。具体的には、
(1)豪雨下に遠距離レーダーとレジャーボート・漁船・定置網を確認する近距離性能に優れたレーダー。
(2)計画航路をGPS測位装置により自動航行可能にする機能。
(3)音声により見合い船・変針点を予告する装置。
(4)座礁予防支援装置、一定水深より浅い海域を航行しないよう警報を出す。
(5)居眠り予防の音声警報装置、特に音声による見合い船・変針点予告装置は老若男女を問わず問い合わせに応えて音声で対処返答する世界で初めての装備を可能とし現実化しました。
その他として、荷役設備(荷役の自動化システムーTCS)で荷役、バラスト等はすべてCRT画面上で操作を行い、液面状況、配管状況等が逐一監視できます。機関設備(機関室の自動化)はMO規制ですでに安全性と信頼性の高い評価が得られており、これに予防診断機能装置、適正メンテナンスを実行します。また、居住区画環境改善のために機関室の振動および騒音対策を図ります。
―近代化船の実船実証はでましたか。
池内 平成9年9月に竣工したLPG船(749総トンで世界初の音声による対話型の1人当直航海支援システムが実船実証されましたが、データーの分析が関係者によって行われ、この結果が今年7月に発表される予定です。
(聞き手=村上)