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第2編

 海洋汚染・海上災害防止関係法令の解説

I 海洋汚染防止関係法令の概要

 海洋汚染の原因となるものにはさまざまなものがあるが、主なものとして

・船舶等からの油、有害液体物質及び廃棄物の排出
・船舶の衝突・座礁事故などによる油の流出
・船内装置の誤操作などによる油の流出・工場、事業場等の生産活動に伴って生ずる産業廃棄物の投棄・人の日常生活に伴って生ずる一般廃棄物の排出
・臨海工場等の生産活動に伴う工場排水の排出

等があり、これらの排出や投棄による海洋汚染を防止するため、各種の規制法が制定されている。このうち海洋環境の保全を目的としている「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」(以下「海洋汚染防止法」という。)では、船舶等からの油、有害液体物質等及び廃棄物の排出を規制しており、また、水質汚濁防止法では、陸上の工場・事業場からの排水を規制し、公共用水域の汚濁の防止を図っている。
 なお、「港則法」、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」、「水産資源保護法」など他の目的で制定された法律でも、汚染原因物質の排出規制などによって海洋汚染の防止に寄与している。


II 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の解説

1 目的 (法1)
 この法律は、船舶、海洋施設及び航空機から海洋に油、有害液体物質等及び廃棄物を排出すること並びに船舶及び海洋施設において油、有害液体物質等及び廃棄物を焼却することを規制し、廃油の適正な処理を確保するとともに、排出された油、有害液体物質等、廃棄物その他の物の防除並びに海上火災の発生及び拡大の防止並びに海上火災等に伴う船舶交通の危険の防止のための措置を講ずることにより、海洋の汚染及び海上災害を防止し、あわせて海洋の汚染及び海上災害の防止に関する国際約束の適確な実施を確保し、もって海洋環境の保全並びに人の生命及び身体並びに財産の保護に資することを目的としている。
 ここで「海洋の汚染」とは、海洋を人為的方法により物理的化学的に変化させ、海洋に係る資源、自然環境、美観、衛生等人と海洋の利用関係に悪影響を及ぼすことを意味している。即ち、油や有害物質の排出による水産動植物資源への損害等、ごみ等の浮遊による美観、自然環境への悪影響等はもちろんのこと、固形物の堆積による海底地形変更、着色の汚水による海の色の変化、温水による海水温の上昇等もすべて海洋の汚染として考えるべきである。
 また、「海上災害」とは、海域における油等の排出又は海上火災により人の生命若しくは身体又は財産に生ずる被害を意味している。具体的には、排出油による養殖水産動植物の被害、海上火災による船舶の乗組員の死傷又は船舶その他の財産の延焼等が考えられる。
 さらに、本法の究極の目的の1つである海洋環境の保全における「海洋環境」とは、海洋の物理的、化学的若しくは生物学的状態等の自然的状態及びその自然的機能をいい、海洋に係る資源、美観、衛生等も海洋環境に含まれるものと解される。

 

 

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