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2.平成2年度以降の旅客船等の訪船指導

 カーフェリーの訪船指導は、前述の経緯を踏まえ、海難防止周知宣伝事業の一環として、日本船舶振興会(現、日本財団)の事業補助金を得て、昭和49年以降カーフェリー訪船指導委員会の積極的な協力のもとに、カーフェリー訪船指導事業実施要綱に基づき継続的に実施されカーフェリーの安全運航に多大の貢献をし、海事関係官庁および旅客航路事業関連業界の高い評価を得ている。しかしながら

(1)平成元年2月2日に発生した共同汽船所属高速艇「緑風」の岸壁衝突事件に見らられるように高速旅客船の事故が増加し社会的に反響を呼んでいる最近の海難の傾向を考慮しカーフェリーのみならず高速船、水中翼船をも指導対象とする必要性が生じてきたこと。

(2)一方昭和63年7月23日遊漁船「第一富士丸」と潜水艦「なだしお」との衝突事故が発生し、その再発防止対策として「船舶航行の安全に関する対策要綱」(第一富士丸事故対策本部、昭63.10.14)および運輸省運輸政策局長通達「船舶航行の安全に関する対策要綱の実施計画について」(昭63.11.17)が発表されたが、日本海難防止協会はこれに対し積極的に協力し、再発防止対策の周知徹底を図ることとした。

(3)近年海洋レジャーへの関心と活動が一般国民に広く普及してきた現状を踏まえ、海事関係者を主な対象としてきた海難防止周知宣伝事業をこの際新たに海洋レジャー愛好者など広く一般国民を対象にした人命と財産の保護に焦点をおいた総合的な海難防止事業とするため海難防止周知宣伝事業の抜本的な見直し作業を進め、このほどその成案を得た。
 以上(1)〜(3)の観点から昭和49年以降継続実施してきた「カーフェリー訪船指導」についてもみ直し作業を推進した結果、「海難防止現場訪船指導」(平成3年度から「海難防止訪船指導」に改称)事業の範疇で「旅客船等訪船指導委員会」を設け、海難防止訪船指導実施要綱を定め訪船指導にあたることにした。
 また、海上運送法第19条第2項にもとづく訓練航海についても輸送の安全確保に関する命令を受けた事業者から日本海難防止協会に対して訪船指導員の派遣要請がなされた場合、当協会ではその都度「旅客船等訪船指導委員会」委員ならびにアドバイザーの諸先生のご協力を得て訓練航海実施計画の確認にあたってきたが「訓練航海」の結果についても「旅客船等訪船指導委員会」に結果を報告することとし、実をあげることと した。
 ちなみに、平成2年度以降に実施されている「旅客船等訪船指導」の対象船舶および訪船指導項目は次の通りである。

 

1.訪船対象船舶

(1) 日本船舶振興会の補助事業としての訪船指導

一般旅客定期航路事業に従事する船舶(海上運送法第指導。2条?)を対象として訪船
(年間約10社10航路程度、カーフェリー、高速船、水中翼船等)

(2) 事業者等からの要請に基づく訪船指導

a.輸送の安全確保に関する命令(海上運送法第19条?、第19条の3?、第23条の2?)を受けた事業者が、日本海難防止協会に訪船指導員の派遣を要請した場合の訪船指導。

b.各事業者、その他から日本海難防止協会に対して訪船指導員の派遣を要請した場合の訪船指導。

2.訪船指導項目

(1) 日本船舶振興会の補助事業としての訪船指導項目

a.第一富士丸事故対策本部の「船舶航行の安全に関する対策要綱」の周知徹底

b.毎年度ごとに訪船指導委員会で設定した重点項目

c.旅客船等訪船指導事業実施要綱による調査確認項目

(2) 事業者等からの要請に基づく訪船指導項目

(1) のa、b、cのほか、地方運輸局長等が要請した安全運航指導項目を加える。

 

 

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