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? カ−フェリ−および旅客船等の訪船指導事業が実施されるまでの経緯

1.カ−フェリ−訪船指導事業の経緯について

 昭和48年5月19日、カ−フェリ−「せとうち」(950G/T、乗組員13名、乗客35名、搭載車両19台)が播磨灘で機関室内主機シリンダ−排気管付近から出火し、乗客、乗員は全員膨張式救命いかだで脱出し得たものの、同船は爆発を繰り返して沈没するという惨事が起こった。また、この事故の記憶も新たな48年6月下旬から7月上旬にかけて、折りから我が国沿岸全域を覆った濃霧の海上で、北は津軽海峡から三陸沖、南は瀬戸内海を中心に、カ−フェリ−の霧中における衝突事故が相次いで5件も発生した。
 運輸省では、連続的に発生したこれらの事態を重視し、同種の事故の再発を未然に防止し、旅客輸送の安全を確保するため、海上運送法第19条第2項に基づいて、各企業の運航管理面の改善、指導を企図して、営業運航を停止し、訓練航海を実施させるという厳しい行政処分でのぞむことになった。
 この訓練航海は、事故を起こした関係船社において、あらかじめ訓練航海実施計画案を作成し、これに従って、訓練を実施し、監督官庁および船舶の安全運航に関する専門家に、直接、運航実態の確認を受けることを条件とするものであった。
 そこで、この行政処分の対象となった各船社は、早急に運航計画の変更を行い、各社、各航路に応じた訓練航海実施計画案をもとに、訓練航海確認のため専門家の派遣方を日本海難防止協会に依頼してきた。
 当協会では、日本旅客船協会とも緊密な連絡をとり、運輸省当局の要請および訓練航海を命じられた関係5社の依頼を受けて、訓練航海の状況の確認を行うことになったが、この作業は緊急を要し、かつまた対象船舶も多いことから、東京商船大学、運輸省航海訓練所、海技大学校、日本船長協会等の全面的な協力を得て、その実施体制を整え、48年7月18日から同月28日の11日間、訓練対象である5社8航路、22隻のカ−フェリ−に訓練航海の状況を確認する指導員を派遣して、運航管理規程および運航基準の遵守、運航体制、航海設備の有効な利用等について、その状況を確認した。
 この直後にもカーフェリーの衝突事故が発生し、前記同様の体制をもって、1航路、計6隻の訓練航海の状況を確認したが、こうした安全運航確保のための直接的な活動は、事故発生の都度、応急的に行うべきものではなく、通常航海時においても、機会をみて 運航自体の見直しを行うなど、安全確保のための継続的な努力こそが肝要であるとの意 見が関係者の間で高まった。
 このため当協会は、日本旅客船協会等の関係方面と連携を密にし、訪船指導事業の一環としてカーフェリーの訪船指導を実施することとし、48年11月、当協会内にそれぞれの分野における専門家および学識経験者で構成する「カーフェリー安全対策検討会」 を設置し、「カーフェリーの訪船指導実施要領」を策定のうえ、49年度より事業を開 始した。
以後、この事業を本格的に実施するため48年度に設置された「カーフェリー安全対策検討会」は常設の「カーフェリー訪船指導委員会」と改称し、この委員会を軸として本事業を推進してきた。

 

 

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