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ホ. 丸中金華山汽船(株)[エルム(鮎川〜金華山、 清田兼雄・ 村嶋 仁)]

(イ) 運航の実態は船長のワンマンコントロールであるので、ダブルチェックができるシステムを作ることが望まれる。

(ロ) 漁船・貨物船からの中途入社の船員が多いことなので、運航の余裕時間を活用して、特に、緊急時の旅客誘導・救命器具・消火器具の取扱い等の短時間で行える訓練を頻繁に行うよう希望する。

(ハ) 乗船前の懇談の際に、高速船(高速ジーゼルエンジン搭載・30ノット以上・2隻所有)の機関故障が多く、メーカーに質問しても原因が解明されない。また、他の会社でも高速エンジンの故障が多発しているとの話があった。機関故障は、重大な事態を招く恐れがあるので、実態を調査する必要があると思われる。

(ニ) 運航管理者(社長)は、我々の指導に積極的に対応しようとする意欲を示し、船長と機関長の分担など指示しテストしたが、乗組員は命令・復唱を行った経験がない……ように見受けられた。

(ホ) 通常は昼間の運航のみであるので、夜間の訓練航海についてたずねたところ、昨年元旦の事故(初詣の臨時便を夜間運航時、鮎川港防波堤に衝突した。)の反省から、夜間の臨時運航を行う場合、予め習熟運航を行うことにしているとのことであり、事故を将来の糧としている姿勢がうかがわれた。

(ヘ) 夜間運航時・多客時には、乗組員を5または6人に増員している。また、多客時にも乗客を定員の90%に抑えて余裕のある運航を心がけているとのことであった。安全に対する姿勢は評価できる。

 

ヘ.石崎汽船(株)[旭洋丸(宇品〜呉〜高浜〜三津浜、 夏目志津馬・ 河野善一)]

(イ) 気温は非常に高かったが往復航とも平穏な気象で視界も良好で出漁船も殆ど見当たらず順調な航海であった。短い港間の短い時間内での発着作業を船長のバウスラスターダイヤル操作のワンマンコントロールで手慣れた感じで繰り返していたが、着桟する時、いま少しゆとりを持って減速を早めにし、より安全な軟着桟をするように心がける必要があるのではないかと思われる。多少のショックがあっても転落の恐れがある出口階段付近に乗客が入れないようにする必要がある。機械は故障するもの人は間違いをするものとし、それでもできるだけ安全であるよう可能な対応をすることが大切である。

(ロ) 音戸の瀬戸は湾曲し見通しが悪く可航幅が狭く(水深5mで最狭部60m)汐流の大きい本航路最大の難所である。音戸大橋下の最狭部付近での反航行会いしないようにさまざまな対応をして苦心しているが、このうち一番有効かつ実行可能なものとしてブリッジ−ブリッジ間の無線による情報交換であると思われる。石崎汽船と瀬戸内海汽船ともに同じ航路、同じ船型のフェリーと高速船の定期航路で共通して、全船で瀬戸通過船の情報交換をしていたが、VHF波のため山かげになり相手船に到着しなかったのか、ワツチ体制になっていなかったのか呼び出し応答が遅れたりしていた。両社の便数もかなりあり極めて有効な手段と考えられるので電波の出力増、周波数の変更、中継アンテナの設置、関係船社の協力協定の実行徹底、改善を検討する必要があると思われる。

(ハ) 復路の呉〜宇品間において約30分間、運航管理者、船長他乗組員6名と安全運航について懇談した。安全運航についての基本事項、旅客船の事故の重大性等ついて具体的な課題とりわけ音戸の瀬戸の安全については全員が熱心に取り組んでいることが感じられた。

(ニ) 今回、運航管理者の上司の常務取締役が同乗され、安全運航に関し多大の熱意を示されたことに敬服する。

(ホ) 船体・計器等:旭洋丸は、瀬戸内海汽船の"太田川"と船型が殆ど同じで、かつ船齢もともに約11年と変わらないが、船体・客室・機関室等の手入れ状況は非常に良好で乗組員の努力が感じられた。計器類も風向風力計、GPSナビゲーター、車両甲板監視ビデオが装備されていた。このナビゲーターは松山在住の海事補佐人の開発になるもので、同社船3隻の外4号器は佐渡汽船で使われている新製品で、良く活用されていたがジャイロコンパスの設備が無いため方位の点で信頼性が半減する。

(ヘ) 救命設備:太田川と同様に救命筏10個、救命浮環4個のみで、法的にはクリヤーされていても最悪の事態を想定した場合にはたいへん変心細いものである。客室は列車式の4人シートが主体で座席の下にライフジャケットが格納されているが、その表示が見当たらないので指摘した。出港後の船内放送は励行されているとのことであった。

(ト) 船員執務状況について:乗組員の殆どが愛媛県出身で家族的雰囲気に包まれる美点もあるが、反面、慣れ合いやマンネリに陥り易い。船長操船時の主機使用号令・復唱に何か阿吽の呼吸を感じた。慣れ合いや油断を避けるため常に初心に帰る気持を維持して欲しい。事務長の代わりにマリンガール2名が乗船して、船客の誘導・案内・客室巡視を担当し、船橋への報告もキビキビと励行され好感が持てた。乗客の評判も良好である。

(チ) 高浜(松山観光港)は浮桟橋で、旅客の乗下船のみで車両は扱わない。潮流が非常に早く離着岸に苦労するので防波堤の設置を要望されたが、これは相当の研究調査が必要と考えられる。

 

 

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