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曲目解説

 

モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲

 

モーツァルトは、わずか35年という短い生涯に600余の珠玉のような作品を残しました。しかも、交響曲、室内楽曲をはじめ、楽劇、協奏曲、声楽曲等あらゆる種類の音楽に及んでいることは、ただ驚嘆のほかはありません。

彼は歌劇もかなりたくさん作りました。「フィガロの結婚」をはじめとして、「ドン・ジョバンニ」「魔笛」「コシ・ファン・トウッテ」「後宮からの誘拐」などは、世界中のオペラハウスでしばしば上演され、広く親しまれています。

「フィガロの結婚」は、1785年から翌年にかけて作曲され、1786年5月にウィーンで初演された全4幕の歌劇です。原作はフランスの作家ボーマルシュ、台本はイタリア人のロレンツォ・ダ・ポンテが書きました。美しいアリアや重唱がふんだんに盛り込まれた豪華な作品です。序曲は愉快なオペラの内容にふさわしい快活な音楽で、これも非常にしばしば演奏される名曲です。

 

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35

 

チャイコフスキーの音楽には不思議な魅力がある。心と心の融け合うような感じがする。女性的感傷性な美しさがある。等々評されていますが、彼ほど親しみの持てる音楽家はないと思います。モーツァルトの美しさには天才的な神秘があり、ベートーヴェンには野性的な激しさがあります。彼は時に憂うつな影を曲に残してはいますが、人々は却って、その影を好んで彼の作品を愛好するのではないでしょうか。

彼は1840年5月7日、ロシアの片田舎で父を鉱山技師にもって生まれました。一族には音楽に縁のある人は一人もなかったので、彼は法律学校に入学させられ、19歳で司法省の役人になりました。しかし、年とともに育っていく心の悩みは深く、1863年、彼は安定した官吏生活を放棄して音楽院に入学し、音楽への第一歩をふんだのです。学校での成績はすばらしく、ここで偉大なるルービンシュタインの知遇を得て、卒業するとモスクワ音楽院の教授に任命されました。こうして彼の地位は安定し、間もなく良きパトロンを得て、生活の苦労なく専心作曲に邁進することができました。

この曲にはロシア風の主題を多く用い、殊に民謡的な旋律や和声の混成に特長があります。最初は、大ヴァイオリニスト、アウアーの非難を浴びましたが、ブロドスキーの演奏によって世に紹介されてからは、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームスの協奏曲とともに、ヴァイオリンの名曲に数えられるようになりました。

 

第1楽章 瞑想的な序泰のあとに歌謡風な魅力ある主題がヴァイオリンによってうたわれます。情緒てん綿たる旋律の美しさは、ここで人々の魂を奪ってしまうでしょう。

第2楽章 不思議なロシア風の和声で木管楽器が序奏部を秦し、ヴァイオリンの主題を導き出す。その憂うつな曲調は人々を魅了します。

第3楽章 前の楽章から切れ目なく溌剌たる第3楽章にはいる。舞曲風の陽気なロンドです。

 

 

 

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