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PROGRAM NOTE

 

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ウェーバー、カール・マリア・フォン

Weber, Carl Maria Von

[1786.11.18オイティン〜1826.6.5ロンドン]

ウェーバーは、ドイツ・ロマン派の作曲家で、ベートーヴェンより少し後の音楽家である。彼の父親は貴族出身で、一族にモーツァルトの妻のコンスタンチアがいたこともあり、モーツァルトのような音楽家にと育てられ、10才からピアノを学ぶ。作曲はハイドンの弟のミハエルに師事し、12才でピアノ作品を、13才でオペラの処女作品を完成するなど早くからすぐれた才能を発揮する。彼は、ピアノ曲をはじめ、室内楽などの器楽作品も数多く残したが、イタリア歌劇が大きな勢力を持っていた19世紀の始めに、ドイツの民話に題材をとり伝統的なドイツの歌芝居(ジングシュピール)のスタイルでオペラを作曲して成功し、高く評価される。彼が「ドイツ国民歌劇の創始者」と呼ばれるのはそのためである。

 

歌劇「魔弾の射手」序曲 (演奏時間12分)

 

歌劇「魔弾の射手」は1821年に完成された3幕からなるオペラで、ウェーバーの最高傑作である。彼の歌劇は「魔弾の射手」を例外として、今日ではほとんど上演されないが、歌劇「オベロン」序曲、歌劇「オイリアンテ」序曲、歌劇「アブ・ハッサン」序曲など、序曲だけがしばしばオーケストラの演奏会で聴かれる。

「魔弾の射手」は、若い狩人マックスと森林監守の娘アガーテの愛の物語である。この序曲は、「秋の夜半」の名で知られる有名なテーマを含む作品で、多くの歌劇序曲の中でも傑作として単独でしばしば演奏される。

荘巌なアダージョの序奏で始まり、ついでホルンがドイツの深い森の静けさを描き、弦の不気味なトレモロが魔王を示し導入部を終える。主部は第1主題がマックスのアリアから不安な気分を、第2主題がアガーテのアリアからの情愛につつまれた気分を描き、愛の勝利をうたいあげる賛歌で曲を開じる。

アダージョ 4分の4拍子 モルト・ヴィヴァーチェ 4分の2拍子 ハ長調。自由なソナタ形式。

 

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モーツァルト、ヴォルフガング・アマデウス

Mozart, Wolfgang Amadeus

[1756.1.27ザルツブルグ〜1791.12.5ウィーン]

18世紀最大の作曲家であり、古典派音楽の発展と完成に大きな役割を果たしたモーツァルトは、わずか35年という短い生涯に、交響曲、室内楽曲をはじめ、協奏曲、声楽曲等のあらゆるジャンルにわたり600余の珠玉の作品を残している。

生まれ故郷ザルツブルグの音楽的環境や父レオポルトの教育はモーツァルトの芸術の形成にかかせぬ要素であるが、むしろ彼は典型的な天才型の芸術家であったといえる。すなわち音楽そのものに人の心をとらえて離さない自然で豊な表現力が備わっており、絶えず移り変わる美的理念を音の上に集約してとらえており、時代を経てもその輝きを失うことのない理想的な形式の中に表現していること等がモーツァルトの最も偉大な美点といわれている。

 

クラリネット協奏曲イ長調 K622(演奏時間30分)

 

この曲は1791年10月初旬に作曲されたモーツァルト最後の協奏曲である。名手アントーン・シュタードラーのために作曲されたものであるが、モーツァルトの生前に演奏されたかは定かではない。

18世紀に登場した新興の楽器であるクラリネットは、モーツァルトとシュタードラーの協力のもとに個性を見いだされ、性格を確立された楽器と言っても過言ではない。他の管楽器と比較してクラリネットの特色は、広い音域をもち、高・中・低音域で音色が異なっており、人声にも匹敵するニュアンスの豊かさを有することにある。また、この協奏曲は、モーツァルトの甘く内面的な響きと、晩年を特徴づける澄みきった音調の不思議なまでの解け合いを示しており、モーツァルトの作品を含めたあらゆる管楽器の協奏曲中で最高の作品となっている。そればかりか、全曲に官能性と精神性の一体となった高貴な表情をたたえたこの協奏曲は、もっともモーツァルト的な作品の一つといえる。

 

 

 

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