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曲目解説

 

ロッシーニ 歌劇「セヴィリアの理髪師」序曲

ロッシーニは、イタリアが生んだ最大の作曲家です。かれの父はホルン奏者、母は歌手であったので、幼少の頃から音楽的環境に恵まれ、はじめは声楽の勉強をしていましたが、のちにオペラ作曲に志望をかえました。以後、生涯を通じて多数の作品を残し、かれの軽妙なリズム、官能的で魅惑的な音楽は、いつの時代でも広く愛されています。

この歌劇は、ロッシーニが24才の時に書いた作品で、かれの歌劇作品の中でも最も充実した内容をもった最大傑作です。歌劇は、スペインのセヴィリアという街の愉快な床屋さんが、伯爵と街の娘の結婚をとりもつ喜劇で、開幕前に演奏されるこの序曲は、ロッシーニの得意とするオーケストレーションの効果が、いきいきとした表情をそえる名曲で、しばしば演奏されています。

 

ショパン ピアノ協奏曲第1番ホ短調Op.11

1830年11月1日、ショパンは祖国ポーランドに別れをつげて、花の都パリヘ向かった。時に20歳。彼はこれを最後に2度と故国の土を踏まなかったのである。

彼はピアノ協奏曲を2曲書いたが、いずれもポーランドをはなれる前に作曲したもので、この第1番は1830年に作曲され、第2番はその前年に作曲された。作品番号が逆になっているのは、第1番の方に自信をもったショパンが、先に作曲された第2番よりも先に出版してしまったからである。

初演はショパンが祖国をはなれる20日前、つまり1830年10月11日にワルシャワで開かれた告別演奏会に彼自身のピアノで行われた。

第1楽章 アレグロ・マエストーソ(早く威厳をもって)

ホ短調 3/4拍子

曲はまず、主題を提示する管弦楽の長い演奏からはじまる。第1主題は前半が男性的に力強く、後半が女性的に優雅な旋律からできていて、弦で奏される。第2主題もやはり弦で奏されるホ長調の甘美な旋律で、ロマンティスト-ショパンの面目躍如たるものがある。この旋律は何度も繰返された後、再び第1主題に触れ、ようやくピアノが出てくることになる。ピアノは最初から技巧をこらした第1主題を華々しくひき出し、ますます名人芸的処理を加えていく。

第2楽章 ロマンツェ(ゆっくりした優美な旋律)

ラルゲット(やや遅く)ホ長調 4/4拍子

夜想曲風の性格をもつ優雅な音楽。弱音器つきのバイオリンが奏する序奏の後に、ピアノがカンタービレ(うたうような)の主題をひき始める。そして、装飾をかえては何回となくピアノがうたい、結尾部を経て静かに消えていく。

第3楽章 ロンド(同じ主題が挿入楽部をはさんで繰返される曲)

ヴィヴァーチェ(活発に)ホ長調 2/4拍子

モーツアルト風のはつらっとした典雅なロンド。2つの主題が演奏技巧をこらしてひかれるから、ピアノ音楽の歯切れのよい美しさを堪能したい。

 

ベートーヴェン 交響曲第5番ハ短調Op.67「運命」

この曲は、ベートヴェンの最円熟期になった画期的な傑作に属し、純粋な古典形式に立脚しながら、自由に個性の強い魂を語り、豪胆に悲愴と闘争と情勢を盛り上げた点で、第3の「エロイカ」をしのぐ驚異的な作品です。

第1楽章は、いきなり荒々しい異様な第1主題をもって始まります。主題とはいってもその本体をなすものは最初の4つの音に要約され、あとはこれを反復し、積み重ねていくだけで、さらにこの主動機は第2主題を構成し、ひいては全楽章を組織的に築き上げるのは、主題法としてさらに驚異的です。ベートヴェンはあるとき弟子のシントラーに、第1楽章の動機を説明するのに「運命はかく戸をたたく」と言ったという逸話がありますがこの一言によって今日まで俗に「運命交響曲」の別称をもってよばれています。つまり「運命」というタイトルは直接にベートーヴェンによって与えられた標題ではありませんが、作品の内容がこれにさほど、矛盾するものでもありません。他方パリ初演の際に、終楽章に移って、あの豪壮な第1主題が開始されるやいなやナポレオンに仕えた一老兵が「皇帝だ!皇帝万歳」と叫んだことにより、当時のパリでは「皇帝交響曲」の名を持って呼ばれていたと伝えられています。

第4楽事では、これまでの黒い雲を払いのけ、輝かしい勝利の凱歌が高らかにひびきわたり、ここにはもはや、運命の闘争もない英雄の勝利のみがすべてを圧倒しています。この開始に胸がすく思いを覚えた老兵が、「皇帝万歳」を叫んだとてあえて不思議はありません。

また、この曲は第6番「田園」と平行して作曲され、同時に初演されましたが全く正反対ともいえる性格の音楽の双子のように作られたというのも、ベートーヴェンの人間像を考えるとき大変興味深いことです。

第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ

第2楽章 アンダンテ・コン・モート

第3楽章 アレグロ

第4楽章 アレグロ

 

 

 

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