デビュー20周年記念
伊藤京子ピアノコンサート
東京フィルハーモニー交響楽団
ロッシーニ:セヴィリアの理髪師 序曲
この歌劇は、ロッシーニが24歳の時に書いた作品で、彼の歌劇作品の中でも最も充実した内容をもった最大傑作です。歌劇はスペインのセヴィリアという町の愉快な床屋さんが、伯爵と町の娘の結婚をとりもつ喜劇で、開幕前に演奏されるこの序曲は、ロッシーニの得意とするオーケストレーションの効果が、いきいきとした表情をそえる名曲で、しばしば演奏されています。
ショパン:ピアノ協奏曲第1番ホ短調OP.11
ショパンはピアノ協奏曲を2曲書いたが、いずれもポーランドを離れる前に作曲したもので、この1番は1830年20才の時に作曲されました。
第1楽章
アレグロ・マエストーソ(速く威厳をもって)ホ短調 3/4拍子
曲はまず、主題を提示する管弦楽の長い前奏からはじまる。第1主題は前半が男性的に力強く、後半が女性的に優雅な旋律からできていて、弦で奏される。第2主題もやはり弦で奏されるホ長調の甘美な旋律で、ロマンティスト-ショパンの面目躍如たるものがある。この旋律は何度も繰り返された後、再び第1主題に触れ、ようやくピアノが出てくることになる。ピアノは最初から技巧をこらした第1主題を華々しくひき出し、ますます名人芸的処理を加えていく。
第2楽章
ロマンツェ(ゆっくりした優美な旋律)ラルゲット(やや遅く)
ホ長調 4/4拍子
夜想曲風の性格をもつ優美な音楽。弱音機付のバイオリンが奏する序奏の後に、ピアノがカンタービレ(うたうような)の主題をひき始める。そして、装飾をかえては何回となくピアノがうたい、結尾部を経て静かに消えていく。
第3楽章
ロンド(同じ主題が挿入楽部を挟んで繰り返される曲)ヴィヴァーチェ(活発に)
ホ長調 2/4拍子
モーツァルト風のはつらつとした典雅なロンド。
2つの主題が演奏技巧をこらしてひかれる。ピアノ音楽の歯切れのよい美しさを堪能したい。
ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調「運命」OP.67
この曲は、ベートーヴェンの最円熟期になった画期的な傑作に属し、純粋な古典形式に立脚しながら、自由に個性の強い魂を語り、豪胆に悲愴と闘争と情勢を盛り上げた点で、第3の「エロイカ」を凌ぐ驚異的な作品です。
第1楽章は、いきなり荒々しい異様な第1主題をもって始まります。主題とはいってもその本体を成すものは最初の4つの音に要約され、あとはこれを反復し、積み重ねていくだけで、さらにこの主動機は第2主題を構成し、ひいては全楽章を組織的に築き上げるのは、主題法としてさらに驚異的です。
第4楽章では、これまでの黒い雲を払い除け、輝かしい勝利の凱歌が高らかに響き渡り、ここにはもはや、運命の闘争もない英雄の勝利のみが全てを圧倒しています。また、この曲は第6番「田園」と並行して作曲され同時に初演されましたが、全く正反対ともいえる性格の音楽の双子のように作られたというのも、ベートーヴェンの人間像を考える時、大変興味深いことです。
第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ
第2楽章 アンダンテ・コン・モート
第3楽章 アレグロ
第4楽章 アレグロ