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PROGRAM NOTES

曲目紹介

 

歌劇《セヴィリアの理髪師》序曲

 

ロッシーニ

ロッシーニ(1792〜1868)はイタリアが生んだ最大の作曲家です。彼の父はホルン奏者、母は歌手であったので、幼少の頃から音楽的環境に恵まれ、はじめは声楽の勉強をしていましたがのちにオペラ作曲に志望をかえました。以後、生涯を通じて多数の作品を残し、彼の軽妙なリズム、官能的で魅惑的な音楽は、いつの時代でも広く愛されています。

モーツァルトの有名なオペラ「フィガロの結婚」の前編ともいうべきこの作品は、ロッシーニが24才の時に書いたもので、彼の歌劇作品の中でも最も充実した内容をもった最大傑作です。歌劇は、スペインのセヴィリアという街の愉快な床屋さんが、伯爵と街の娘の結婚をとりもつ喜劇で、開幕前に演奏されるこの序曲は、ロッシーニの得意とするオーケストレーションの効果がいきいきとした表情をそえる名曲で、しばしば演奏されています。

 

ピアノ協奏曲第1番ホ短調作品11

 

ショパン

ピアノの詩人、フレデリク・ショパン(1810〜1849)の作品は、そのほとんどがピアノ独奏用に書かれたもので、オーケストラ曲や他の器楽曲もわずか残されていますが、ごく例外的と言ってよいでしょう。

ピアノ協奏曲は2曲あって、第1番は1830年に作曲され、第2番はその前年に作曲されました。それぞれショパンが19才、20才の時の作品です。作品番号が逆転したのは、第1番の方に自信をもったショパンが前に作出された第2番よりも先に出版してしまったからです。ショパンは1830年祖国ポーランドを発って、永く夢見ていたパリヘ向かい、2度と故国の土を踏むことなく1849年に、パリで亡くなったのでした。

この協奏曲は、パリヘ出発する前のいわば告別演奏会で演奏するために作曲されたものと言われています。しばしば、そのオーケストラ・パートの弱さを指摘されますが、確かにピアノの自在な表現に比較すると、いかにも稚拙な感じがしますし、オーケストレーションについてもあまり洗練されたものとは言い難いようです。それでもこの曲が古今のピアノ協奏曲中最も人気のある作品のひとつでありつづけているのはピアノ・パートが大変美しくすぐれているからに他なりません。わずか20才の若者の手になった作品にしては、充分な表現の完成度を獲得していますし、その霊感に満ちたピアノの表現は、青春のリリシズムをまきちらしながら、実に爽やかな感動を与えてくれるのです。

第1楽章は主題を提示する長い前奏から始まり、甘美な旋律の第2主題を繰り返し再び第1主題に触れようやくピアノがスタートします。ピアノは最初から技巧をこらして華々しく名人芸的処理を加えていきます。

 

 

 

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