横山 碩致(よこやま ひろよし)(大10.4.1生・岡山県赤磐郡瀬戸町)
多年にわたり美術刀剣類に対する理解と啓発普及、後進の育成に努め、深い造詣と鑑定力を有する岡山県美術刀剣界のリーダーとして活躍するなど、美術工芸の調査と保存継承に貢献された。
1] 昭和9年14歳で刀剣研究の道を志し、戦後は自営業の傍ら刀剣や古銃の研究を続け、同23年日本美術刀剣保存協会の設立に参画し、岡山県支部理事として美術刀剣類に対する理解と啓発普及に尽力し、35年からは支部常任理事に就任し後進の育成に寄与している。
31年美術刀剣類の研究同人である備前鏨会を刀匠や刀剣関係者の協力を得て設立し、研究の中心となって活躍するとともに機関誌「たがね」の発刊に努めた。52年の終刊まで同誌に多数の研究成果を発表して、美術刀剣類の工芸的・美術的価値に関する認識の拡大、普及啓発に大きな役割を果たした。また、31年「たがねを訪ねて」を出版したほか、刀剣美術誌に「鐔鑑定資料」「鐔散歩」「正宗再考論」等、刀剣や古式銃から鐔などの小道具にいたる多数の論文等を研究成果として発表するなど、その深い造詣は鑑定家や刀匠に高く評価されている。
2] 刀剣に関する広い知識と鑑定力が認められ、昭和35年日本美術刀剣保存協会の審査員に、また同48年には審査員として最高の鑑定力を示す“奥伝位”を受けて岡山県美術刀剣界の中核的存在となった。50年には文化庁から銃砲刀剣類登録審査委員に任命され、以来、県内の美術刀剣類の登録審査を担当している。
岡山県は備前刀をはじめとする刀剣の生産地として全国に知られており、現在でも年間約1000本が新たに登録されている。錆や傷みの激しいものも多く登録審査は困難を極めるが、氏は多年にわたる豊富な経験をもって他の審査委員をよくまとめ、審査会の適切な運営に貢献している。
3] 昭和58年、古くから名刀の産地として知られる同県長船町に設立された備前長船博物館の開館とともに顧問となり、以来、展示運営について経験に基づく適切な指導助言を行い同館の発展に寄与している。
多年、美術刀剣類の調査・保存・継承に努めるとともに多くの後進を育成するなど、氏は岡山県の美術刀剣界の振興に大きな役割を果たしている。
(岡山県教育委員会推薦)