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1 法律扶助協会の歩み

 

日本では昭和27年1月、日本弁護士連合会により民法上の公益法人として法律扶助協会が設立され、資力の乏しい人に対する民事訴訟の援助が開始されました。

国は昭和33年度からこの事業に対する補助金の交付を開始し、平成9年度ではその額は約4億7千663万円になっています(うち、6,399万円は阪神・淡路大震災被災者のための援助に使われます)。

 

多様化する事業内容・不足する資金

 

法律扶助協会は昭和40年代のはじめには激増した交通事故事件の解決に追われ、またサリドマイド事件やスモン訴訟など、公害、薬害事件の援助を行うなどしてきましたが、主として財政的な制約のために事業を大きく伸ばすことはできませんでした。この中で、従来の民事事件の援助に加え、昭和48年度からは最高裁判所家庭局の照会に応えて少年保護事件付添扶助を開始、49年度からは日本船舶振興会(日本財団)の援助により、無料法律相談事業を開始しました。

昭和58年度からは、日本が難民条約を批准したことにともない、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の要請により、難民法律援助を開始しました。また、平成2年度からは日本弁護士連合会の要請により、刑事事件の起訴前の援助である刑事被疑者弁護援助を開始しました。

民事法律扶助に加え、あらたに開始されたこのような事業は、いずれも従来の制度では対応することのできないものでした。また現在の民事法律扶助が、支出した資金の全額を後日援助を受けた人から返還を受けることを原則とする制度であるため、この建前に合わないものは別の制度として組み立てられる必要がありました。

しかし、国庫補助のないこれらの事業はいずれも深刻な資金難に出会っており、十分な活動には程遠い現状です。

 

法律扶助制度研究会報告

―民事扶助の青写真―

 

諸外国における制度の整備とともに日本の制度の立ち遅れが目立ってきたため、平成5年6月、衆議院法務委員会は法律扶助制度のありかたについて本格的な調査、研究と、そのために必要な予算措置を講ずべきことを決議し、法務省はこれを受けて、平成6年12月「法律扶助制度研究会」を発足させました。

研究会は約3年にわたる研究・調査を経て、平成10年3月、報告書をまとめました。

この報告書は日本における法律扶助の公式な研究報告としてははじめてのものであり、次のような内容を持つ画期的なものでした。

(1) 法律扶助制度の整備が国の責務であり、基本法を制定して事業を行うべきことを明確にするとともに、弁護士・弁護士会も事業に協力すべきことを指摘しました。

(2) 国は事業費について補助金を増額するとともに、組織の管理運営費についても財政援助すべきことが指摘されています。

(3) 費用の全額を利用者から返還させることを原則としている現状の運用は改善する必要のあることが指摘されました。

(4) 法律相談や、裁判前の援助の充実の必要が指摘され、一般の弁護士の事務所で法律扶助の相談が受けられる、「登録弁護士」の制度が提唱されています。

 

 

 

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