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3.2防食技術の研究

3.2.1防食性能試験装置

平成10年度は各要素の材料について防食性能の評価を行うことができる防食性能試験装置(平成9年度に設計)を製作した。製作部分はナトリウム・カリウム等添加系、亜硫酸ガス添加系、試験片ホルダーである。図3.2-1に防食性能試験装置の概略図を示す。本試験装置の特徴は、実機と同等の組成、温度の燃焼ガス中において、実機と同等の試験片温度を再現できることにある。試験片近傍の燃焼ガス温度は、熱電対により計測し、燃料の流量制御装置を用いて制御する。また、試験片の温度は試験片表面に取り付けられた熱電対により計測され、冷却用空気流量調節器を用いて所定の温度に保持する。

3.2.2防食試験用テストピース

平成10年度はニッケル基耐熱合金(Rene80H,IN738LC,IN792Hf,CMSX-11,INCO713LC)及びコバルト基耐熱合金(FSX-414)の防食性能試験用テストピースを作製した。

3.2.3防食性能試験

a)防食性能試験

1)概要

重油を燃焼するガスタービンにおいては、燃焼ガス中に存在する灰分が高温部材に付着する。この灰分に溶融相が含まれているとき、高温部材の腐食損傷が加速されることが知られている。この腐食形態は、高温腐食または溶融塩腐食と呼ばれている。溶融塩腐食による腐食速度は、合金表面の保護性酸化物皮膜の溶解を伴うために通常の腐食(溶融相の付着を伴わない腐食)の場合と比較して著しく増大する。

重油燃焼ガスタービンの高温部材に付着する溶融塩Na2SO4は熱力学的に安定な物質であり、主に海塩粒子として取り込まれたNaClと燃料中の硫黄分の燃焼により生成したSO2やSO3との化学反応によって生成するものと考えられている。

一般的に高速燃焼ガスが燃焼器からタービンの動静翼部を通過する時間は短いため、化学反応が完了できず、NaClが一部残存する可能性もあると言われている(3)

したがって、海洋環境において運転される重油燃焼ガスタービンではNa2SO4-NaCl系溶融塩による腐食が問題となる。

平成10年度はガスジェネレータタービン及びパワータービンの動翼、静翼材料を対象にして、基材の耐高温腐食性を相対評価することを目的として、S,Na,K等の腐食成分を添加した燃焼ガスによる防食性能試験を行った。

2)試験方法

2.1)供試材

供試材を表3.2-1に示す。

2.2)試験条件

試験装置は平成10年度に製作した防食性能試験装置(図3.2-1)を用い、試験条件はA重油を燃料とする実機を想定し、以下のように設定した。

 

 

 

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