2.2高効率タービンの研究
2.2.1ガスジェネレータ・タービンの研究
a)タービン冷却翼構造の研究
1)目的
SMGTの高い目標性能を達成するためには、翼列の空力性能の向上、冷却空気量の低減が重要となる。一方で、冷却空気の低減によって高温部品の温度が上昇するとその寿命も低下することとなり、これらの相反する要求を高度にバランスさせる必要がある。昨年度に試設計したタービン翼列は、従来方式の冷却構造を採用していたため、空力設計上は問題ないものの翼部温度解析において翼面の一部に高温域が認められ目標寿命を満足しないことがわかった。このため本年度は翼部寿命を満足するべく以下の改良研究を実施した。
2)翼型の見なおし
冷却空気を増加させることなく翼部のメタル温度を低減させるためには次の点が重要な課題となる。
・翼外面の入熱量を低減する。このため、空力性能を維持した上で各段の翼の全表面積を最小にする。
この点を考慮して翼型を改良した。図2.2.1-1に1段静翼の、図2.2.1-2に1段動翼の翼形状と解析結果の比較を示す。いずれも空力性能を悪化させない範囲で翼列ソリディティを小さくしている。翼面マッハ数分布から負荷の上昇にもかかわらず無理な減速域などが生じていないことが確認できる。これらの翼形状を元に翼部温度解析を実施した。
3)冷却翼温度解析
本年度は見なおした翼型を元に冷却設計を実施した。図2.2.1-3に1段静翼、1段動翼のフローネットワークモデル図を示す。1段静翼については基本構造を昨年と同じとし流量配分の最適化でどこまでメタル温度低減が可能か検討した。1段動翼については、昨年度の2パスに対して3パス構造を採用することでメタル温度の低減を図った。
図2.2.1-4に1段静翼の2次元温度解析結果を示す。1段静翼については主に内部インピンジ冷却の配分を変えることで前縁部にあった高温部の温度を下げることができた。今後はフィルム冷却孔諸元の最適化、TBCとの組み合わせについても評価し、更に冷却空気の低減を図る。
図2.2.1-5、図2.2.1-6に第1段タービン動翼の3次元温度解析結果を示す。冷却構造の高度化により最高温度を下げることができた。1段静翼と同様に今後はフィルム冷却孔の追加、空気配分の最適化により更なる冷却空気量の低減を図る。また、構造面で鋳物の製作が容易になるような改良を図っていく。
4)まとめ
本年度は、昨年度設計した翼型の改良をはかり、入熱量の低減、冷却面積の低減、冷却空気配分の最適化、構造の高度化により冷却翼の目標寿命を満足する目処を立てた。今後は更なる性能向上、寿命確保のため、TBC、フィルム冷却の最適化の検討を実施する予定である。