2.1.2F型軸流圧縮機の研究
本研究では、特に定格点で高効率が得られるF型軸流圧縮機を開発することを目的としている。要求性能が非常に高いため開発の過程では解析、要素試験等を行い、その成果を改善設計に反映させる。平成9年度はa)F型軸流圧縮機供試体の第1次の設計及び解析、b)圧縮機要素試験装置の配置、系統の検討、c)翼列試験装置の配置、系統の検討を実施した。平成10年度はa)圧縮機要素試験装置の設計及び製作、b)翼列試験装置の設計及び製作、c)F型軸流圧縮機供試体の設計及び解析を実施した。
a)圧縮機要素試験装置の設計及び製作
本装置は、排気圧力調整弁を含む排気系統、供試圧縮機を駆動する駆動系統、潤滑油系統、計測・制御系統より構成される。 なお、排気系統のうち排気圧力調節弁より下流側、動力系統のうち動力源及び増速機の一部、潤滑油系統の主要部品、及び計測・制御システムの一部は既存の設備を使用する。
今年度は装置の詳細設計・製作を実施した。装置の概観を図2.1.2-1に示す。増速機(注1)と供試圧縮機の間に取り付ける動力を伝達する部品である増速機アダプタの構造を図2.1.2-2に、主排気圧力調整弁を図2.1.2-3に示す。また排気圧力調整弁は大流量用、小流量用、放風用の3種類があり、流量の微調整には小流量用を、また供試圧縮機がサージング状態に入った場合には動作速度の速い放風用を使用する。
注1 既存の駆動源ガスタービンの回転数を供試圧縮機の回転数まで増速する既存の設備
計測系統については各要素試験及び組合せ試験で共通に用いる機器により構成され、図2.1.2-4に示す。性能計測項目の主要部分を占めるのは温度及び圧力であるが、温度についてはデータロガーに取り込み、圧力についてはスキャンバルブに取り込み、それぞれデジタル信号に変換し、計測用パソコンにて物理量への変換、性能計算等を行う。計測用パソコンは高速で多数の計測データを処理するため、特殊な仕様となっている。
また、圧縮機の内部の空気の速度、圧力、温度などの状態量を計測するセンサーを遠隔操作により移動させるトラバース装置を図2.1.2-5に示す。計測ソフトは計測内容や供試体モジュールが変わっても柔軟に対応できる様配慮した。表示画面の例を図2.1.2-6に示す。
制御システムは回転速度の制御、3種類の排気圧力調整弁の制御、そしてシステムを安全に運用する為の監視機能から成る。なお、回転数の制御は動力源ガスタービンの制御システムと連携して行い、任意の圧縮機修正速度(吸気温度に応じた標準温度に相当する速度)に制御する機能が盛りこまれている。
b)翼列試験装置の設計及び製作
この試験では既存の単段軸流圧縮機要素試験装置を利用して、SMGTの軸流圧縮機の中で最も重要な第1段動翼を模した供試翼列を試験する。今年度は供試翼及び計測機器の設計・製作を行った。