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以下に項目順にその研究概要を示す。

(1)環境負荷低減技術の研究

環境負荷低減技術の研究では、低NOx燃焼器を開発するための研究を実施する。

現在、ガスタービンのNOxを低減する方法として燃焼器に水又は蒸気を注入して燃焼温度を下げる湿式が主流であるが、清水を多量に必要とするので舶用には適しない。本研究開発では、乾式の低NOx燃焼方式により、NOx排出量を目標値まで低減する計画である。現在のガスタービンに広く用いられている拡散燃焼に代えて、予蒸発・予混合希薄燃焼方式の研究を行う。天然ガス焚きによる同方式の実用例はあるが、本研究では液体燃料焚きの実用化を図る。

このため、燃焼器試験装置による各種試験、コンピュータによる熱流体解析等を駆使して研究する。

(2)燃費改善技術の研究

本研究では燃費を改善するために、様々な観点からガスタービンの熱効率向上の障壁となっている要因を洗い出し、これをブレークスルーする各種の要素技術を開発する。

その主なものは、まず、排気ガスの熱を圧縮機を出た空気に与える再生サイクルを採用することである。このため、再生熱交換器の開発研究を行う。舶用エンジンとして成立するには小型の熱交換器でなければならず、コンパクトで大きい伝熱面積を持つプレートフィン形熱交換器を開発研究する。

次に、ガスタービンの熱効率を大きく支配するタービン入口温度(TIT)は、この出力クラスのガスタービンの最高レベルを超える1,200℃に設定している。このために、小さなタービンのノズル翼、動翼を極めて効率良く冷却できる冷却構造の開発が必要で、このための研究を行う。

さらに、圧縮機、タービンというガスタービンの主要コンポーネントの高効率化を図る研究を実施する。圧縮機は低圧側を軸流段、高圧側は遠心段とする混合形式を採用し、高効率化を図る。この軸流段と遠心段のマッチング、さらに圧縮機とタービンのマッチング等、ガスタービン固有の高度な設計技術が要求されるが、コンピュータによる性能予測や、流れの解析手法を駆使した研究と共に、圧縮機の性能試験を実施し、その性能評価・改良を行う。

また、舶用主機エンジンとしては部分負荷での効率改善も大きな課題である。このため、可変静翼型軸流圧縮機と可変ノズル型パワータービンの開発も実施する。

(3)船舶対応技術の研究

燃料として使用するA重油や吸気に含まれる海水によるガスタービン各部の腐食防止、舶用主機としての2軸式ガスタービンの運転制御システム、ピッチングやローリング等の船体動揺に対する機器への影響等、ガスタービンを船舶に搭載することにより生ずる問題解決のための研究を実施する。

A重油対応の課題としては、タービン翼、燃焼器、熱交換器等の防食材料やコーティングの研究及び燃焼器での燃焼の研究を行う。

(4)実験機による陸上試験

上記の各種要素研究の結果を総合して、出力2,500kW級のガスタービン(実験機)を製作する。本研究開発では、この実験機の陸上運転試験により、目標が達成されたかどうか評価する。

 

 

 

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