初演当時、私、小宮、でんでんさんのキャスティングは最初から決まっていた。そこに有薗くんが加わり、水谷さんが哲さんを連れてきた。問題はヴォーカルの真ちゃん役だった。この役だけは歌唱力がないと成立しない役柄だったからだ。そのとき私の頭の中にはもうこの人しかいないという男がいた。太平サブローくんである。(中略)仕方がないので顔合わせと忘年会をかねてカラオケボックスで宴会をし、そこにわざわざサブローくんを大阪から呼んで歌ってもらうことにした。状況もよく分からずやってきたサブローくんがとりあえず一曲歌うと、それだけで全員が「ヴォーカルはこの人しかいない」と納得してしまった。