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3 舶用機関からの大気汚染物質の排出量に関する調査

 

3.1 船舶排ガス排出量算定方法の調査検討

 

陸上の固定発生源や自動車など移動発生源からの排出量の算定方法は環境庁や通産省などによりマニュアル化されており、排出量の積み上げも行政レベルで日常的に行われている。しかし、船舶からの排出量については現在まで排出量の規制対象にされていないため、既に規制対象となっている固定発生源や自動車などに比較すると統一的な排出算定方法は未整備な状態にあると言える。また、技術的にもC重油を用いる外国船籍の超大型貨物船からガソリンを用いるプレジャーボートなどの小型船までと対象機関の規模が非常に幅広いことから、全てを網羅的にカバーする排出量算定方法および排出係数が確立されているとは言えない状況にある。

ここでは、過去の調査などにおける船舶排ガス排出量の算定方法について比較検討し、さらに今回調査の範囲とする船舶の区分けについても検討を行う。

 

3.1.1 排出量算定方式の調査検討

(1)環境庁の排出量算定方法(NOxマニュアル)

国内では、船舶からの排出量の算定については、環境庁が監修した窒素酸化物総量規制マニュアル(以下NOxマニュアル)に記載された方法が用いられていることが最も多い。

NOxマニュアルは、もともと大都市地域を中心に設定された窒素酸化物総量規制地域内での排出量を地方自治体などが算出することを目的に開発されている。海面上どこまでを総量規制区域とするかについては法律上明確な規定はないが、マニュアルにでは「当該地域内に存在する港湾区域内並びに当該地域に影響を及ぼすことが推定できる周辺地域の港湾区域及び航路」をその対象範囲とするとされており、通常その地方自治体が管理する港湾区域内が、総量規制区域内とて扱われている。つまり、日本全体あるいは湾全体からの排出量を把握するために、開発されたものではないこと留意する必要がある。

本方式は、原理的には対象港湾地域内の1隻当たりの排出量または燃料消費量を推定し、これに港湾統計などの隻数を乗じて港湾区域内からの排出量を算定する。表3.1-1に示すように、実際には、船舶ごとの運航実態データを機関類の出力などはその総トン数および船種をパラメータとした推定式により算定する方法である。

したがって、港湾区域内のふ頭を利用する全船舶の諸元は全て明らかなものという前提で算出方法も組み立てられている。ただし、荷役時の補機ディーゼルおよびボイラーの負荷割合など、総トン数および船種以外の把握しにくいパラメータについては表中に示すように設定例の記載があり、これらを使用する場合が多い。

 

 

 

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