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(2) 海洋分野における技術開発の現状と課題

「海洋」に関して、国および地方公共団体が実施しているプロジェクトをリストアップし、その動向を分析した。

 

1] 省庁による縦割り

主要な省庁の海洋への取り組み状況を表5.1-1に示した。表5.1-1をみると、省庁ごとにテーマが区分けされる傾向にあり、このため、分野横断的なテーマの実施がほとんどないことがわかった。

 

2] 研究プロジェクトの方向性

地球環境問題や資源、エネルギーに関連した分野では、基礎研究に重点が置かれており、重要テーマにも関わらず応用研究がないことがわかった。また、基礎研究の中では、「遺伝子」等のマリンバイオテクノロジーや、「海中コミュニケーション」等の情報通信技術に関しては有望視されるものの現状では取り組みが少ない。

 

3] 空間利用分野におけるプロジェクトの偏り

空間利用分野については、プロジェクトの内容に非常に大きな偏りがある。海洋構造物に対するプロジェクトと船舶に対するものにほぼ限定されており、生活、リクレーション、産業といった、いわゆる海洋空間の利用という観点でのプロジェクトはほとんど実施されていない。

 

4] 地方公共団体の海洋への取り組み

地方公共団体と国では海洋への取り組み方が大きく異なることがわかった。地方公共団体の「海洋」に対する利用価値は、主として観光や地域産業振興による地域の活性化にあり、国が実施しているプロジェクトとしてはほとんど挙がらなかった「海洋エネルギー」や「リクレーションの場」、「橋梁、海底トンネル」等についての取り組み例が、地方公共団体では多いことがわかった。また、福岡県、長崎県、高知県、富山県、蒲郡市、大阪府、北海道等が積極的な活動を実施している。

 

5] プロジェクトの達成状況

プロジェクト成否のポイントとしては、予算規模、研究期間、研究体制が妥当な範囲にあることに加えて、いかにポイントを絞り込んだテーマ選定ができるかが重要であることがわかった。全般的には、海洋関連の個々の分野については、それぞれそれなりの成果が達成されているものの、それらは個々の枠の中で終始してしまっており、分野横断性、戦略性が感じられないのが実状である。今後、我が国において、将来を見据えた戦略的なプロジェクトを実施することが重要な視点であると言える。

 

 

 

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