3.2.9 地方公共団体の海洋への取り組み
(1) プロジェクトの抽出
国が主体となっているプロジェクトのリストアップを行ってきたが、その方向性にはかなり偏りがみられた。具体的には、いわゆる海洋空間利用分野について、あまり手が付けられていない状況にあった。そこで、これらの分野についてその補完状況を調べるために、地方公共団体にまで調査の範囲を広げた。
表3.2-15に示すように、地方公共団体の「海洋」への取り組み状況の把握にあたり、最近3年間の新聞記事(日経4紙および日刊工業新聞)より見出しを抽出し、前述の国家プロジェクトと同様に図2.1-1に従って分類した。なお、この中には、民間企業の取り組みも一部含まれている。
(2) 地方公共団体の「海洋」への取り組みの動向
地方公共団体が主体的に取り組んでいる研究開発プロジェクトについて、「海洋」の各分野別にその動向をまとめた。
1] 科学技術から見た海洋
「深層水利用」と「海水淡水化」に代表される海洋エネルギーに関連した項目が極めて多い。「深層水利用」は主に高知県と富山県が主体となっており、「海水淡水化」は主に渇水対策として、福岡市、蒲郡市、平戸市、長崎県等の自治体が熱心に活動を行っている。「海洋科学」に関しては、「海洋」についての理解を深めてもらうことを目的として、一般人を対象とした海洋科学館等が設立されている。「バイオテクノロジー」および「情報通信技術」に関しては、自治体レベルではほとんど活動は行われていない。
2] 地球環境問題から見た海洋
重油流出事故と関連して「海洋汚染対策」に属する活動が多い。重油流出地域では自治体ごとに対策組織が形成されているが、具体的な対策としての重油の分解、分離やオイルフェンスによる防御措置については、民間企業が活発に支援を行っている。「海洋汚染対策」としては、その他にも、廃材コンクリートを利用した海水浄化や、海水を利用した湖水の浄化という研究例もみられる。国のプロジェクトとしては比較的多く存在する「地球温暖化対策」が、地方自治体レベルではプロジェクトがほとんどみられない点は興味深い。