第2章 21世紀における海洋開発・利用の目標
2.1 社会の求める海洋利用ニーズ
(1) 現代社会における海洋の役割と期待
21世紀を間近に控え、いたるところで20世紀の総括と21世紀の展望についての議論がなされている。立場や捉え方によって今世紀は様々な形態で表現されるが、「人間のありかたが根本から変わり、人口とエネルギー消費量が極端に増加したこと」は変えようのない事実である。さらに21世紀には、化石エネルギー資源の枯渇を始め、二酸化炭素放出による地球温暖化、砂漠化、環境汚染の拡大、世界人口の爆発的増加による食料問題など地球規模での問題が一層顕在化してくることが予測される。
これらの諸問題に対して、地球表面の約70%の面積を占める海洋の環境、資源、空間を利用して解決しようとする期待が大きくなってきた。しかし、広大な海洋環境を把握するための技術が確立していないばかりでなく、資源開発、空間利用などに必要な基盤的技術も整備されていないのが現状である。
また、海洋に係わる産業は、我が国の産業構造の変化および低成長経済が長引く中で、海洋の開発利用が社会経済の発展に貢献するという期待とは裏腹に依然として低迷しており、これは、これまで実施されてきた開発プロジェクトによっていかなる技術が取得され、それがどのような分野で活用され得るのかの十分な評価が行われてこなかったことが大きな要因と考えられる。このような産業創造の観点からも海洋にかける期待は大きいものがある。
(2) 今後の展開の可能性
21世紀が地球人類にとって、資源とエネルギー問題に直面するであろうことは前述の通りである。来世紀半ばには、人口は100億人に近づくことは間違いない。今後更なるエネルギー問題、地球的規模での環境問題に対して地球表面積の7割を占める「海洋」のもつ、地球環境保全能力、資源、および空間を効果的に利用して、人類が直面する課題に対処する海洋技術の開発に一層の拍車をかけることが、21世紀を直前にして再認識されつつあるように思われる。
本調査では、これまでの海洋開発の歴史的な変遷や現状における展望を考慮しつつも、今後の海洋の持つ利用可能性を考慮すると、第一義的には海洋を利用する立場から見た体系が必要であるとの認識に到った。具体的には、「技術開発・研究開発の場としての海洋」と「21世紀の諸問題を解決する場としての海洋」である。2.2.1節で後述するように、海洋開発推進計画等では、あくまで海洋開発側に立った分類を採用している。本調査では図2.1-1のように大きく分類し整理した。