日本財団 図書館


6.2 高度造船CIM実現時の業務変革のイメージアップ

ここでは6.1に示した高度造船CIMの情報技術を念頭におきながら、造船全体の各業務における業務変革を、ありたい姿やあるべき方向という見地から述べる。その目的は、高度造船CIMが導入されると業務がこう変革する、あるいは変革し得るという基本的な認識を合わせること、そして、情報技術の位置付けを明確にすることにある。しかし、各社が現在持っている政策なり開発課題や実施項目を調査・集約し全体を展望することは現実的にできないことであり、下記に列挙した業務変革キーワードの根拠とその重要度について必ずしも明確な裏付けがある訳ではない。

業務変革のありたい姿の全体像を図6.2-1に示す。縦軸は大きな業務群を示し、横軸は個船の契約から加工開始までの時系列を示す。入力・出力と矢印は、業務間の情報の大きな流れを示し、6.1及び6.2の業務変革のキーワードが表中に散りばめられている。

ブロック分割業務、機能設計のフェーズでは、協業支援というテーマを持ち、詳細設計フェーズでは統合化されたPMという大きなテーマを持っていることが示されている。

ここではまず、高度造船CIMにより大きな業務変革が期待される契約後の業務、すなわち、この図に示す業務についてその詳細を説明し、更に、その前後のステージである営業やアフターサービスについても変革イメージを述べる。

(1) D-機能設計

(a) D1-プロジェクトチーム型の設計体制化

課係別の縦割りの体制から、案件ごとに必要スキルを持つ設計者がチームを組み、一人のプロジェクトマネジャーにより統率されるフラットな体制となる。設計チームは、PMを共有し、ネットワークを介して自在に情報交換を行いながら設計を進める。業務プロセスに従って設計が進むようにエージェントが協業を支援し、場所の遠近を問わない外注も含めたバーチャル設計チームが組まれる。

(b) D2-設計の最適化レベルの向上

3次元ソリッドモデル化されたPMと強大なパワーを持つパソコンを利用したディジタルエンジニアリング環境となる。CAE・CAD・CAMと各種シミュレーションソフトウェアの統合を行い、信頼性と最適化レベルが格段に向上し、開発期間も大幅に短縮され、干渉による不具合は零となる。高機能化したPDMにより設計履歴が保存され、検討ケースを体系的に生成・保存することができるようになる。ビジュアリゼーションやバーチャルリアリティが進み、顧客・営業・資材・設計・生技・工作部門間の情報共有と製品理解が設計初期段階から可能となり、各部門の要求が早い段階で抽出・吟味・検討され、最適化される。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION