(3) ジャーナル情報
エージェントが動作するために必要な知識情報として、以下のような内容がジャーナル情報として格納されると考えている。
・エージェント同士(技術者同士)の通信ログ
・エージェントの通信ログから生成したワークエレメント間の依存関係データ
エージェント同士の通信ログを解析することによって、ワークエレメントレベルの業務プロセスを顕在化することができる。この情報を基にして、業務知識の共有や体系化、更には、業務プロセスの改善を図ることが可能となる。
3.3.5 協業支援システムのエージェント動作イメージ
ここまで各構成要素として述べてきた協業支援システムについて、エージェントを中心とした動作イメージとして述べる。
プロジェクトマネジャーが進捗管理のためのアクティビティレベルの業務プロセス(ワークフロー)を定義し、そのプロセスに沿って実際業務が進行するようにワークエレメントレベルの業務プロセスをエージェントが監視・統制するのが、本システムの基本的な運用サイクルである。
1] プロセスの定義が完了すると、プロジェクトマネジャーのエージェントは、各技術者のエージェントに対して、作業が割り付けられたことを通知する。これに対して技術者が受け入れを表明すれば、マネジャーのエージェントと技術者のエージェントの関係が結ばれ、アクティビティ間の依存関係や、プロジェクトの進捗が定期的に交換されるようになる
2] プロセスモデルが定義されると、エージェントは定義された業務プロセスに沿ってプロセスが進行するように技術者を支援する。具体的には、エージェントは技術者の作業に連動して発生する種々のEventを常時監視しており、例えば設計変更が発生した場合には、技術者への通知と対応手順を提案、あるいは他のエージェントと通信してスケジュール調整を行うなどして、技術者の協業を支援する
3] 各アクティビティ内部で行われる技術者の作業はエージェントが常時監視しており、例えばワークエレメント間の依存関係は、人間同士の情報交換をエージェントが自動的に学習する。一旦エージェントが依存関係を学習した後は、変更通知等をエージェントが代行して行うようになる。このようにして、エージェント同士の情報交換によって、自分のエージェントが他の技術者の作業状況等協業に必要な情報を把握しているので、自分のエージェントの指示に従って業務を進めてゆけばスムーズに協業できるようになる。ただし、あらかじめ分かっている依存関係は、プロセス定義時に記述しておくことによって、エージェントが新たに学習する必要は無く、その与えられた情報を利用して作業支援を行うことになる
4] 一方、プロジェクトマネジャーは、エージェントが収集した、技術者の作業進捗情報を設定した業務プロセス(ワークフロー)と比較して、プロジェクトチームの作業進捗及び問題個所を把握できる。こうして、各技術者の状況に応じて作業指示を出したり、業務プロセスの変更などの対策を講じることが可能となる
以上のように、本年度はプロセスモデルによる協業支援システムの実行メカニズムとしてエージェント技術を導入し、エージェント間通信機能を実現した。また、プロセスサーバー、エンタープライズサーバーに関しても、その最も基本的な機能を実装した。来年度はエージェントに知識処理部を組み込み、より高機能化するとともにサーバー機能の強化を図っていく。