3.3.2 エージェントの機能と役割
2.5で述べたように、エージェントは近年盛んに研究されている新しい情報技術であり、自立的にシステム間の相互運用支援や技術者の知的な支援を行うことが大きな特徴である。本開発研究で適用するエージェントは知識と推論機構を持つので、より正確に言うと知的エージェント(Intelligent Agent)である。現時点では、エージェントに技術者がある状況において次にとるべき行動に関する知識をすべて持たせることは困難であり、あるルールに従った定型的な処理に関しては、エージェントが自動実行するが、基本的には技術者の意思決定を支援するというのがエージェントの位置付けであり、意思決定に必要な情報の提供、例えば他の技術者の状況、過去の事例、取り得る手段の候補リストの提示等を行うものである。本開発研究においては、エージェント技術は技術者がエージェントの次々に提案する内容を評価し、エージェントが持つ知識の修正を図ることにより、将来的には技術者を高度に支援できるシステムに発展可能なシステム的枠組みであると考えており、エージェント技術をプロセスモデルによる協業支援の仕組みを実現するための中核的な技術として位置付けている。
本開発研究の協業支援システムにおいてエージェントは以下の4つの機能を有する。
・他のエージェントとの通信機能
・Eventの監視機能
・Event情報からのException(例外)検知機能
・Event、あるいはExceptionへの応答処理の実行機能
エージェントの知的機能に関しては、人間の業務を全て自動的に代行してしまう高度なものから、単に情報収集機能のみを持つ低レベルなものまで千差万別であるが、本開発研究においては、エージェントは基本的には人間の処理を支援するものと位置付け、人間とエージェントが一体となって業務を実行する運用形態を前提としている。
本開発研究におけるエージェント機能開発のコンセプトは以下の通りである。
・人間が今できないことを、できるようにする。
・人間が今できていることを、簡単にできるようにする。
・人間が今簡単にできていることは、自動化する。
図3.3-2はプロトタイプシステムにおけるエージェントのシステムアーキテクチャを示したもので、他のエージェント、あるいはアプリケーションプログラムとの通信機能、メッセージの解析機能及び各種協業支援に必要な処理機能から構成される。エージェントのプロトタイプはJavaで開発した。