運航シミュレーションの成果については、この計画に当初異論を唱えた関係国からも現在では高い評価を得ている。
4)補足研究プロジェクト
これらの研究成果は、事業の集大成及び運航シミュレーションに必要な情報となることから、前項同様幹事会メンバーが事業の円滑な推進を図る任に当たり、所期の成果を得た。
5)NSRにおける氷況数値予測システム
NSR航行においては、経済的な運航を確かなものとするばかりでなく船の安全保全の上からも、氷況予測システムが確立されていなければならない。このため、前年度に引き続きさらに研究を進め、本年度は力学的DMDFモデルを用いて、1995年夏の北極海全域の計算を行い衛星氷況データを初期値とする氷況予測計算を行って、NSR航行支援に対する本法の有用性を検討した。その結果、現在の力学的DMDFモデルによる氷況予測はなお改良の余地が有るものの、実用に供し得る見通しが得られた。このモデルは航行用情報予測としてのみならず、海洋生物、海洋汚染など様々な分野での転用が可能であることから、それぞれの分野の専門家より広域及び狭域における更なる予測精度向上が期待されている。なお、船の最適航路ガイドについては、ロシア内で中央サービスセンターによる航行ガイド方式(有償)の構想もある。
6)入手資料の取りまとめ
現在一般に利用し得る関係資料としては、INSROP GISを含めINSROP WORKING PAPERを中心に、海図、更には啓蒙的資料など様々な資料がある。またINSROP事業成果については今後も様々な機会を得て、その成果の普及、活用が図られることになる。
7)国際協力
INSROP Phase II事業を通じ、国際協力の実を挙げ、特にロシア関係機関、関係者との間の信頼関係を更に高めることができ、情報ネットワークを構築することができた。これも本事業の貴重な成果の一つと言えよう。
INSROP及び関係国内事業は全て、日本財団の熱心な御支援、御協力の下に実施され、その故を以って実り豊かな成果を得たものである。