3.2.5 本システムの総合評価と将来課題
以上、力学的DMDFモデルを用いて1995年夏の北極海全域の計算を行い、衛星氷況データを初期値とする氷況予測計算の、NSR航行支援に対する有用性の検討を行った。氷況予測計算以外にも、氷況データ取得から結果出力までの時間を短縮し、利便性を高めるため、種々のインターフェースソフトを自作した。得られた結論と将来課題をまとめると、以下の様になる。
(1) 北極海全域の水況を一週間先まで予測するために必要な計算時間は、DECの600MHz Alphaチップ1個を搭載した小型コンピュータを用いて、3.5時間(海流との連成計算)であった。これは、今後の小型コンピュータの進歩を考えると、予測システムごと船に搭載することさえ可能な計算時間と言える。
(2) 一週間の予測計算に必要な風データは、36MB(但し、テキストファイル。圧縮して約11MB)である。圧縮して送るにしても、相当なデータ量になる。船内で予測計算するにしても、地上で計算した結果を船に送るにしても、NSRの通信インフラの整備・拡張は、必要不可欠である。
(3) 現在の力学的DMDFモデルによる氷密接度の予測誤差は、北極海全域に対して、一週間予測で15%程度、3日予測で10%程度であり、それほど大きくはない。しかしこの誤差は、北極海航路付近に限れば、2倍近くにまで増大する。