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2.3 求められる触媒システムの機能

 

2.3.1 小型内航船からの排気ガス処理の現状のまとめ

 

(1)舶用ディーゼルエンジンの排気ガス

(a)窒素酸化物(NOx)

最近の舶用ディーゼル機関は熱効率向上のためにシリンダー内最高圧力も高く、出力率の増加も図られる傾向にあり、過去のエンジンに比べNOx排出レベルは高くなっている。NOx排出レベルは機関の回転数、シリンダ径、運転特性等で大幅に異なるが、平均的にみると4サイクル機関で1,300〜1,400ppm(O213%)程度、2サイクル機関で1,800〜1,900ppm程度が現状と思われる。

一般に回転数では低くなるほど、シリンダ径では大きくなるほどNOxの排出レベルは概して高くなる傾向にある。また、発電機特性の運転ではNOx排出レベルが負荷とともに増加するかほぼ一定であるのに対し、舶用特性では低負荷時には回転数が低くなり、NOx排出レベルは高くなる傾向を示す。さらに燃料が低質になるほど着火性の影響を受けてNOxの排出レベルが高くなる。

(b)硫黄酸化物(SOx)

舶用ディーゼル機関から排出されるSOxは燃料油中に含まれるS(硫黄)の量にほぼ比例し、おおよその値は燃料分析結果から推測することができる。舶用ディーゼル機関からのSOx排出レベルは平均的にみて現在400〜800ppm程度と思われる。排ガス中のSOxのほとんどはSO2である。ただし、陸上の一般産業用ボイラの排ガスではSO3はSOx全体の約1%程度が普通で高くても数%に過ぎない。これに対し舶用ディーゼル機関ではSOx中に占めるSO3の排出レベルが高いのが特徴である。SO3(無水硫酸)はSCR法で硫安等の生成を引き起こすため未反応アンモニアの発生を極力抑える必要があり、また触媒への影響についても考慮する必要がある。

(c)煤塵

陸上ディーゼル機関の脱硝装置では、現在煤塵による問題はあまりないようであるが、低質燃料油を使用する舶用ディーゼル機関の脱硝装置では無視できない重要な開発課題になるものと考えられる。煤塵の排出レベルは使用する燃料油に大きく影響され、特に負荷が低くなるほどその影響は大きい。例えば、軽油では負荷にかかわらず約30〜50mg/Nm3でほぼ一定であるのに対し、C油では20%負荷時約270mg/Nm3、低質燃料油の一種であるビスブロークン油では同じく20%負荷で約700mg/Nm3になるとの報告もある。

また、舶用での脱硝、脱硫処理において、煤塵の量もさることながら、その中に含まれている微量成分や付着性による触媒への影響について留意する必要がある。

 

 

 

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