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2.2.2 船舶からのNOxの排出状況

 

(1)国際海事機関(IMO)のデータ

国際海事機関に提出されたノルウエーの資料によれば船舶から排出される各排ガス成分の排出係数は表2.2-2のようである。排出係数とは、燃料1kgを燃焼させたときに排出されるNOx, SOxなどのガス重量のことである。この値は推進機関の形式、燃料の性状、運転条件などによっても異なるもので、船によって変わるものである。米国やOECDなどの調査結果があるが、かなり大きな差がある。我が国における最近の実態調査の結果では、ディーゼル機関からのNOxの排出係数は4サイクル機関では約59g/kg-fuel, 2サイクル機関では約84g/kg-fuel程度であり、平均すると70g/kg-fuel前後になっている。この値はノルウエーの調査結果とほぼ同じである。一般的には、NOxの排出係数は2サイクル機関の方が4サイクル機関よりかなり大きい。

また、ここで排出されるNOxとはその大部分(95%程度)がNOであり、残りがNO2のことを示している。

 

表2.2-2 船舶からの大気汚染物質の排出係数(g/kg-fuel)

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(出典:塩出敬二郎、日本造船学会誌、763, 14, (1993). )

 

(2)我が国のデータ

世界全体では船舶からのNOx、SOxの排出割合は平成10年度の調査では13.4%、5.9%と見積もられている。一方、日本では大気汚染物質は船舶からの排出が世界の平均値に比べて極めて大きい。国内における船舶からの大気汚染物質の排出量の調査結果を表2.2-3に示す。日本ではNOx、SOxともに船舶からの影響が非常に大きいものであることがわかる。

多くの船舶が集まるところ、つまり大きな港湾の周囲における大気環境と船舶からの排出についての調査も行われている。船舶は港に停泊中でも荷役作業、船内作業や冷暖房などのためにボイラーや発電機などを運転するので排気ガスを放出する。東京湾に停泊している船舶から排出されるNOx, SOxの量を消費燃料量から推定した結果を示したものが表2.2-4である。NOxの場合、例えば、東京湾では陸上での排出量の約10%強、横浜地区(横浜、川崎、横須賀)では約17%の量を排出しているという推定もある。以上述べたように大気環境に対して船舶が大きな負荷を与えていることが、各種の調査により明らかになってきた。

船舶からのNOxの排出実態に関しては、海上交通全体の排出負荷を把握する調査と、種々の運航条件で運航している船舶の排出実態の調査とがある。前者については前述したように、いくつかの報告が出されてきており、ほぼ状況がつかめるようになってきている。

船舶からの大気汚染物質の排出は、とくにSOx, NOxは、陸上からのそれらと比べてもかなりの量にのぼることがわかってきている。一方、個々の船舶に注目すれば、その運航条件によって抵抗特性や機関負荷状態が変わるので、汚染物質排出特性も変化する。しかし、これに関しては、機関回転数とNOx濃度という対応関係がほとんどで、負荷に応じて、排ガス組成を全て計測した例はほとんどない。

 

 

 

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