海外消防情報
記録的に減少した米国の焼死者数
一九九七年における米国の焼死者は四、〇五〇人で、過去二〇年間で最低を記録した。住宅火災による焼死者数は前年より一六・七%減少して三、三六〇人であったが、全焼死者数に占める住宅焼死者数の割合は三年連続して増加し、現在では米国全体の焼死者数の八三%を占めている。負傷者は、二三、七五〇人であった。
消防局の出動件数は、一七九万五、〇〇〇件で、一九九六年より九・一%減少した。放火(疑いを含む)建物火災は八・二%減少して七八、五〇〇件で、これによる焼死者は四四五人であり、前年より一四・四%の減少となった。住宅火災による財産損害は、約四四億ドル(約五、〇〇〇億円)であった。
焼死者数が減少したとはいえ、四、〇〇〇人以上が焼死しているので焼死者数を減少するために、米国防火協会は各消防局に対して次のように勧告している。
1] 市民の火災予防指導を強化する。
2] 一般住宅に煙感知器をより広く普及して、定期的にテストし、点検させる。
3] 住宅では避難計画を策定し、実施する。
4] 住宅用スプリンクラーをより一層普及するよう努める。
5] より多くの安全な家庭用品を開発する。
6] 子供、高齢者、低所得者等火災危険グループに対してより多くの注意を払う。
一九九七年における米国消防隊員の殉職者数も大きく減少して九四人であった。ちなみに、二〇年前の一九七七年には一五七人で一九七八年には一七一人であった。このように減少した要因としては、防火服を含む個人装備の改善、より安全な機器、消防訓練の充実及び高度の災害現場管理が上げられる。
しかし、これらの改善や進歩にも一定の限度があり、更に殉職者の数を少なくするために主に次のような消防隊員の行動に関する課題が指摘されている。
1] 出動途上における消防車両の安全運転に一層心がける。特にスピードの出し過ぎと交差点における信号に注意するとともにシートベルトを必ず着装する。
2] 心臓発作による死亡を減らすために、消防隊員の採用時における身体検査を強化し、フィットネス(消防隊員としての適性)に留意する。また、毎年消防隊員の健康診断を行って、特にストレスの解消に努める。
3] 災害現場においてより多く非常警報器を使用するとともに、その使用に関する訓練を強化する。また、非常警報器は他の個人装備と同様に適切に保守管理をし、テストをする。
4] 現場における消防隊員の所在確認と作業内容とを含む現場管理をより一層充実する。
5] 消防隊員の健康維持と安全を最重要課題としてこれに取り組むべきである。
(文責 大野 春雄)