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また、火炎が拡大し、西側部分にも延焼して全面火災となった時点で、窓を挟んで反対側にあたる西側部分の石綿セメントけい酸カルシウム板からも断続的に爆裂を繰り返す状況が認められました。

(四) 室内が全面火災となった時点で消火しましたが、消火後の状況を観察すると、窓を挟んで両側に使用されていた石綿セメントけい酸カルシウム板がほとんど残存していない状況であり、この部分に壁体が設置されていたとは思われないような破損状況でした。(写真7・8参照)

 

五 爆裂現象の発生するメカニズム

 

このように今回の火災実験では、外装材として使用されていた石綿セメントけい酸カルシウム板が炎に煽られて爆裂を起こし、かなりの勢いで周囲に飛散するという特異な現象が見受けられました。

そして、この火災実験で設定した可燃物品類は通常の建物火災とは比較できない程僅かな量であり、収容物等可燃物品類の燃焼による影響は考えられないことから、石綿セメントけい酸カルシウム板自体の持つ特性から発生すると認められます。

したがって、石綿セメントけい酸カルシウム板の特性から、この爆裂現象の発生するメカニズムについて考察してみます。

 

(一) コンクリート及び石綿セメント板の爆裂現象

コンクリートや石綿セメント板等の建築材料が急激に加熱されると爆裂を起こすことが知られており、これらに関する実験結果や論文も発表されています。

例えば、コンクリートは、PSコンクリートやコンクリートブロックで多く発生するが、普通コンクリートでは発生しにくいと言われています。

そして、こうした爆裂現象は、加熱によって含有されている水分の急激な気化膨脹によって起こるとされており、この爆裂の発生する条件として次の三点があげられています。

1] コンクリートや石綿セメント板等の組織が緻密であること

2] 含水量が大きいこと

3] 急激な加熱を受けること

したがって、この条件の内の一つでも欠けると爆裂が起こりにくくなることから、石綿セメント板の爆裂を防止するためには、表面に発泡性防火塗料を塗布することが有効であるとされています。

 

(二) 石綿セメントけい酸カルシウム板の爆裂について

石綿セメント板が爆裂を起こすことは、かなり以前から知られていますが、石綿セメントけい酸カルシウム板の爆裂については、明確に記述されたものはありません。

また、天ぷら油火災実験用モデルハウスの壁体に石綿セメントけい酸カルシウム板を使用し、この直近で天ぷら油の火災実験を繰り返して行い、かなり壁体に接炎して拡大した状態でも、ひび割れが生じる程度でしか観察されていません。

しかし、石綿セメントけい酸カルシウム板が石綿セメント板と極めて類似したものであることから、石綿セメントけい酸カルシウム板も条件によっては爆裂を起こすものと考えられ、先に述べたコンクリートや石綿セメント板の場合と同様の条件によって爆裂が発生すると考えられます。

また、今回の火災実験では、石綿セメントけい酸カルシウム板の裏側部分を出火部位と設定したため、初期の段階から急激に加熱される結果となり、このような状況では爆裂する危険性が高いと考えられます。

 

 

 

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