(4) 語りかける言葉
指導するときには、言葉、身ぶり手ぶり、表情など、いろいろなものを使って指導する。そのなかで、一番多く用いられると思われるのが、言葉である。
児童に指導するとき、一番心掛けるべきことは、わかる言葉を使うことである。例えば、「直角」や「平行」、「垂直」などは、算数でその単元を学習した者でなければわからない。このような場合は、壁と床を使ったりしながら、説明を加えるべきである。
また、「視線を右に」などの注意をしても、顔を動かさず目だけで見てしまうようなことがある。その場合は「顎で見る」「両耳を向ける」など、「視線」とは違う言葉で語りかけてみることも必要である。
目先を変えながらの練習も、学習者を飽きさせないようにするために必要であるが、繰り返すことを飽きさせない、根気強さも養われなければならない。そして技能も向上させなければならない。そのためには、オーバーラーニング(過剰学習)が必要である。うまくできたところでやめないで、さらにつづけて練習を行うことによって練習の効果が十分に保たれる、つまり上達するといわれている。
形をおぼえることそのものの楽しさを感じ、そして良い形を演じ、褒められることは、すべてに自信を持てるようになることにつながる。
小学生のためのメンタル・トレーニング
[見取り稽古とイメージを使ったメンタル・トレーニング]
古の武芸者は、人から教わるというより人から技を盗んだ、と伝えられている。見ている時は、身体運動を伴わない。つまり、頭のなかでイメージを使ったり記憶を使ったりしながらおぼえるのである。ということは、見ておぼえることも大きな枠で見れば、メンタル・トレーニングの一つである。
練習中に、他の人がやっているところを見ておぼえる。後で、自分でもやってみる。日常的に行われていることであるが、これを積極的に練習に取り入れることができれば、より効果的に技術の向上がなされよう。
イメージを使ったメンタル・トレーニングには、周知の通りいろいろな方法がある。しかし、児童に対して「自分が形をやっているイメージを思い浮かべなさい」と言っても、どれくらい正確に、どれくらいはっきりとイメージが思い浮かべられるかわからない。とはいえ、子供のほうがその自由な発想から、多様なイメージを浮かべられることも考えられる。自分の体の感覚、思考能力、判断力など、まだ発達段階にあるために、イメージを浮かべる能力はあっても多様化しすぎて系統立てられないと考えられる。このような状態で、トレーニングをしても効果は期待できない。そこで、子供たちの能力をよりよく生かすために「見取り稽古」を利用する。
他の人がやっている時によく見るのであるが、見るだけでなくその動作を「言語化」させるのである。言葉に出すことになると、単に見るだけよりももっと注目することにもなる。また、言語化することは、イメージを浮かべる能力を持っための前段階として必要なものであるため、より具体的に動作を言語化できるようになれば、イメージを浮かべる時にもより鮮明なイメージを浮かべられるようになると思われる。そうすることによって、イメージを使ったトレーニングを本格的に行うまでの準備ができ、より効果的なトレーニングへと移行することができる。