小学校体育授業および地域空手道(児童期)指導のねらい
幼少年期の児童、生徒の体力や運動能力の低下が社会問題となって久しい。また、文部省は「生涯体育・スポーツ」の実践を奨励しているが、全国的な盛り上がりをみせるに至っていない。実情は誠に厳しい状況にある。このようなおり文部省では、文部大臣認定の地域スポーツ指導者制度を発足させた。「生涯体育・スポーツ」の実現、いわゆる「スポーツの生活化」を目指す施策として専門の指導者を養成するためだ。これは注目すべき制度といえる。
毎年文部省から発表される体力・運動能力テスト報告書※をみると、児童期の体位・体格の全国平均値は年々向上している。しかし近年になって体力・運動能力については、その平均値が「過去最低」を記録することが多くなっている。このような状態がこれからも続けば日本人の体力・運動能力水準は下降の一途をたどり世界の下位になることが懸念され、ひいては健康水準も同様の結果をみることになる。真に健康で明るい社会を築くためには、児童期の体力つくりや運動能力の開発について真剣に考え、国家的レベルで実践する時が来ているといえるのではないか。
子供の小学校での運動経験が、その後の健康な人生を大きく左右する大事な時期であることは論をまたない。この時期に専門家の体育指導者に指導を受けることによって運動能力が開発され運動の仕方、楽しみ方を身につけることができる。このことが、「生涯体育・スポーツ」の実現を可能ならしめる。しかし、現在小学校における体育授業は専門の体育指導者が担当していない。このために派生する諸弊害はこれまで見逃されてきた。ここにわが国の子供の体力・運動能力が低下している原因の一端がある。文部省の地域スポーツ指導者制度の狙いはこの状況の改善にあるといえる。「国民皆スポーツ運動」を展開し生涯スポーツを実践するためには、できるだけ早い時期に子供にスポーツの楽しさを教えることが必要である。地域スポーツ指導者制度の成否は、まさにこのことにかかっているといえる。
(財)全日本空手道連盟に所属する多くの会員が文部省の公認指導者資格を取得している。これらの指導者が小学校、あるいは地域スポーツ指導の現場で児童に対して楽しい空手、魅力ある空手道指導を展開していくことが、全日本空手道連盟の願いである。
※「平成9年度体力・運動能力調査の結果」官報資料1998.12.2