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1]はじめに

日本の自然の多くは、過去の人間とのかかわりの中で、日本の気候風土や農業的土地利用に適応した複雑な生物相を育んで来た。近年、これらの二次的自然に生息・生育する多くの動植物が、人間社会の変化によって絶滅の危機に瀕している。

我々はこのような状況をふまえ、身近な生物生態系の保全を前提とした「里山の保全と新しい活用」を提唱し、その普及と啓発に取り組んできた。この提案は自然保護運動に於ける新しい展開として、都市近郊の“みどり”の保全ばかりでなく、都市に於ける自然復元(ピオトープ)活動や各地の「まちづくり」「むらおこし」活動などとしても大きな広がりを見せている。さらに「故郷の野山=里山」の活用は、高齢化社会を迎えての健康維持や生きがい、青少年の自然体験、自然学習の場や日本の伝統的文化(伝統行事や祭りなどを含む)や伝統的技術の継承など、まさに民族文化の見直しを機軸とした「新しいライフスタイルの確立」運動としても、その可能性を示唆するものとなっている。

このように市民参加による「里山・田園環境の保全」活動は、国民的ボランティアによる様々な活動を展開している、英国など欧米諸国でも注目している。中でも我が国の伝統的農業技術による環境保全活動の手法は、「多様な生物環境の保全」や「持続可能な社会」のモデルとして、国際的にもその成果が注目されているところである。

 

 

 

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